Antisocial personality disorder(反社会的人格障害)の次に、私が個人的に興味を持っている障害は、通称OCD(Obsessive-Compulsive Disorder)とこちらでは呼ばれているものです。日本では強迫性障害と言われているようです。Obsessionとは、無意識だったり自分では抑制がきかない思考やイメージが頭から離れないことを言い、例としては、細菌などに自分が汚染されることを極端に恐れることがあげられます。Compulsionとは、ritual behavior(儀式的な行為)ー繰り返し行われる行為(ガスを止めたかとか鍵をかけたかなどを不必要に何度も確認したり、手をしつこく繰り返し洗ったりすること)をさし、その行為はどうやっても止める事はできません。多くの有名な映画にもこのOCDをもった人物が描かれていますが、その中のひとつで、ニコラス・ケイジ主演の”Matchstick Men”でこれらの行為が描かれているのが印象的だったので、興味のある方はご覧になってください。個人的にこの映画は好きです。

ただ、私も含めて多くの人が、電車やバスのつり革や手すりをちょっと汚いなと思ったり(見た目は何もないとしても)、本や雑誌を買う時に同じものが2冊以上ある時には、誰もまだ手を触れていないだろうと思われる後ろや下の方から取り出す事があると思います。アメリカではこういう時ふざけて、”私、ちょっとOCDがあるから”なんて言いますが、これは本当のOCDではないとされています。その分け方はとてもシンプルです。自分でこういった行為を嫌だとか治したいと思っている(ego-dystonic)か、そうでないか(ego-syntonic)というだけです。ちなみに、ego-syntonicでOCDほどまでではなくても、軽く似たような症状がある場合には、OCPD(Obsessive Compulsive Personality Disorder)と呼ばれます。部屋を異常にきれいに掃除・整理整頓することが好きな人がこれに当てはまると思われます。

少し余談なのですが、このdystonic-syntonicルールによって、同性愛というものが精神障害とされないとなっています。

前置きがかなり長くなりましたが、まだOCDを持つ患者さんには会った事がありませんが、私のスーパーバイザーが、ちょっと変わったタイプのOCD患者さんを持った事があったそうです。

トムは小さい頃から不思議なファンタシーを持っていました。それは、母親の前で自殺をするというものです。その考えに押しつぶされそうになるたびに、母親は何としてでも止めてきたのですが、ある日、トムが拳銃を持ち出し自分のこめかみに銃口を向けました。もうすっかり疲れきった母親は、とうとう”撃ちなさい”と言い、止めなかったのです。彼はそのままこめかみを真っすぐ撃ったつもりだったのですが、方向が反れ、前頭葉の方を打ち抜きました。幸い命を落とすことはなく、病院で回復したときにトムは、自分の異様なファンタシーもなくなっていることに気づきました。スーパーバイザーが言うには、OCDを抱える人たちには共通で前頭葉やその他の部分に異常が見られるそうで、実際この障害を治す時にはその部分を切り取ることもあるということでした。つまり彼は、とてもラッキーなことに、自分で自分を治療したことになります。

後に、彼はこの経験を生かして、心理学者になったということです。