振り返るとおじさんがこっちを見て立っていた
だいぶ長い時間が経ったらしい
私はアパートの玄関の前でしばらくたたずんでいた
「警察から『今から家に送りますから』って電話が来たよ?」
「わかんないの」
「なにが」
その途端猛烈な吐き気がした
私はその場で
ふと倒れてしまった
ガラガラガラガラ
ピーポーパーポー
「救急で………急……す!……」
遠くでいろんな声がかすかに聞こえる
「ああ死んじゃうのかな…」
なぜか知らないけれど、そんな気がした
救急車の中で、おじさんが私の手を握ってこう言った
「また…居なくなるのか……?死ぬな!死なないでくれ!」
言葉を発するたびに私の手が締め付けられる
生暖かい涙が、私の手に落ちて伝わった
なのに、今考えているのは母のことだった
「今頃どうしてるかな…心配してるかな…忘れられてるかな…」
きっと、どっちもだね…
たまには思い出してくれてるよね…
意識がようやくはっきりした頃
私は医師に伝えられた
「妊娠2ヶ月です」
