その音量、押し付けになっていませんか? | music-geek

その音量、押し付けになっていませんか?

アンプという道具があります。楽器の音量を電気的に増幅するものです。ソリッドベースやソリッドギターのように共鳴体を持たず、電気的増幅が必須なものには必要不可欠です。ではそれはどの程度の音量であるべきか、というと、生の楽器とバランスする音量であるべきです。黎明期のロックなんかもそういうバランスであるように思えます。私の手元にある1950年代のギターの譜面には、音符を弾く時はアンプを使いコード弾きの時はアンプを切れ、という指示が書かれています。ところが今の多くの非クラシックな音楽の現場では「アンプやPAを使って音量を持ち上げるのが当たり前」になっているように見えます。かなり小さなハコでもそうです。そもそも楽器の音ってかなり大きいですし、人間の聴覚は非常に繊細です。2000人くらい入る大ホールでケータイ鳴ったら演奏がぶち壊しになるくらいに繊細なのです。これが忘れられている気がします。過剰に音量を持ち上げることは、聴き手に対して音を「押し付ける」ことになってしまっています。繊細なピアニシモもないし、お客さんを「聴き疲れ」させてしまうのです。それって良いことでしょうか?

私はそうは思いません。PAに頼りすぎると複数の楽器の音が空間で混ざり合う魅力が、2つのPAスピーカーから出る音に支配されてしまうんです。それって生楽器で演奏する魅力を奪ってしまっているのではないでしょうか?小中学生のブラスバンドでもそこそこ大きな会場で生音でできるのに安易に音量増幅に走る、もしくは無意識的に使うのってどうなんでしょう?

自宅で動画を見たり音楽を聴いたりのと、生演奏の現場で生音の複数の楽器を聴くのでは、聴こえ方が全然違うはずだし、大袈裟に言うと、そこをアピールしないと生で音楽を演奏する価値ってどんどん見失われてしまうのではないかなぁ、と感じるのです。もう20年くらい前に、アンプまで真空管でオリジナルのフェンダーローズを使って演奏したことがありました。アンプのパワーを入れすぎると音が歪むので、歪まない音量を基準にしてバンドサウンドを作ったら非常に美しかった、という経験がありました。音量についての意識はもう少し神経質であって良いのではないかと思っていますし、自分仕切りのバンドではもう10年くらいそこは大事にしてやっています。