音楽のジャンルやスタイルの違いは方言の違いと同じ。
アメリカの一部のジャズ教育者の間では"Musical Dialect"という言葉が使われます。音楽のジャンルやスタイルは方言の違いに近いという考えによるものだと思います。日本でも昔は「クラシックの人にジャズはできない」とかその逆で「ジャズの人にはクラシックはできない」とか色々言われてきています。できないんじゃなくて、アーティキュレーションの使い分けができてないということなんです。何年か前にフランスのマーク.ギュージョンとメールでQ&Aセッションをしましたが、彼はロシア音楽とフランス音楽でも違うって言ってました。ヨーロッパでも違うみたいなんですが、欧米言語と日本語の発音ってかなり違うんです。下を使ってエアを遮るポジションが日本語は欧米言語に比べて少ないですし、シングルタンギングの"T"の発音ですら違うんです。欧米の音楽家はきちんとした日本語の発音ができないので、ここの違いを説明できません。これは日本人の演奏家が自分で研究しないとダメなところです。アーティキュレーションが違うというのは、例えて言うと関西言葉を知らない俳優さんの関西言葉のナレーションに違和感を感じるのと同じです。同じ譜面を吹いても違うものになってしまうんです。考えてみれば、海外で活躍している音楽家の大半は弦楽器やリズムセクションです。管楽器は案外少ないように思います。管楽器やリズムセクションの音のコントロールは「タッチ」だけなので、差が出ないように思えます。翻って、外国語をネイティブスピーカーのように発音するのは相当難しいです。ここの違いは案外大きいのではないかと思います。
考えてみれば、昔はジャズではブラインドフォールドテストみたいなのがあって、音だけで誰かを当てるんですが、古い録音だと黒人と白人、アメリカとヨーロッパと日本、みたいな聴き分けは案外できたものです。今はかなり平準化しましたが、それでもやはり多少はそうした痕跡は残っていますし、個人的には管楽器、特に金管楽器だと日本人だとほぼわかります。私も絶対的な自信はないですが、昔バリー.ハリスの輪アークショップが東京でも開催されていた頃、「彼のように吹きなさい」って言われたことはあるので、そこそこの線はいっているのではないかとは自覚しています。