”K"がないのにチキチキとはこれいかに? | music-geek

”K"がないのにチキチキとはこれいかに?

古い映画に「チキチキバンバン」というのがあります。主題歌は日本でもかなり知られているのではないかと思います。子供の頃に公共放送の歌はともだちとかいう番組があってよく歌われていたような記憶もあります。大人になって子供に見せようと思ってDVDを借りてきてビックリ。英語のタイトルには"K"の文字が一つも使われてないんです。オリジナルの英語のタイトルは"Chitty Chitty Bang Bang"でした。まぁ考えてみたら英語の発音をカタカナ的に忠実に日本語化すると「チティ(実際にはほぼチリに聞こえる)」になるわけで、インパクトがないというか日本語の発音的には違和感しかないからでしょうか、おそらくは映画会社の広報担当が「チキチキ」という表記にしたのではないかと思われるのです。これのヒットによって、後にハンナ.バーバラのWacky Raceが「チキチキマシン猛レース」になったのではないかとも思われるのです。これ、単なる笑い話なのですが、管楽器を演奏する人間には結構重要な問題を孕んでいます。というのは、日本語の発音と英語の発音の違いを認識しているかどうかって、音楽表現に大きな影響を与えるからなんです。喩えて言うと、関西言葉を知らない俳優さんの関西言葉のナレーションに感じるあの違和感が音楽の中に出てしまうんです。シングルタンギングの"T"の発音が日本語と英語でかなり違うんです。これを突き詰めて考えていくと音声学を学ばないといけなくなるのですが、そもそも"C"と"T"ですら発音するポイントが違うんです。タンギング、すなわち舌でエアを遮って発音する仕組みが言語で違うわけです。小学生のブラスバンドがミュージックエイトあたりのグレン.ミラー.メドレーみたいなのを演奏すると音が跳ねて盆踊りになっちゃうのもこう言うことが原因だし、最近あまり言われなくなったけど、ジャズの人はクラシックができないとかその逆って、発音の違いを認識できていないからなんだと思うのです。これは日本語の発音を知らない欧米人には説明のつかないことです。だから日本人が自分で考えないといけない問題。で、厄介なのは、先生で、演奏しているときはきちんとできているけど、生徒さんに伝えるときにそれが日本語の発音にすり替わっているので、上手く伝えることができないリスクが高いと言うことです。もちろん声楽科では発音はきちんと指導されますが、管楽器ではこの辺りのことについての研究はほぼお留守だと思います。昔はジャズのレコードでブラインドフォールドテストをやると黒人、白人、ヨーロッパ、日本くらいの聞き分けは結構簡単にできたものです。今はずいぶん平準化しましたが、それでも日本人だとわかるケースは多いように思います。海外で活躍する日本人演奏家の大半が打楽器や鍵盤や弦楽器というのは、タッチでコントロールする方がアーティキュレーションの壁が低いからなのかもしれません。