ビッグバンドの譜面を吹く時に忘れてはいけないこと。
音楽を言語に例えると、楽譜というのは文字のようなものです。つまりクラシックであれジャズであれ、譜面に書かれたものは譜面通りに吹けば同じように演奏できます。譜面を吹くというのは言語に置き換えると朗読に当たります。楽譜にはテンポや強弱や表情記号などもあるので、本というよりは台本、シナリオに近いものかもしれません。が、音楽の場合、特に学生さんや社会人のビッグバンドではこの「ト書き」の部分が忘れられがちです。好きな曲の好きなメロディのところが出ようものなら大喜びで吹いちゃう傾向がよく見られ、曲のクライマックスのところで失速しちゃうなんてケースも実によくあることです。亡くなったCarl Saundersがよく言ってた言葉に「Charts speak in itself.」というのがありました。つまり、作者の意匠に従って吹くと、その音楽的意匠は自ずから現れる、ということです。どうも世の中全体が押すことばかり、もしくは足し算でしか物事を考えられないような状況があるように思われます。ラーメンの味付け、パチンコの当たり演出などなどなどなど。音楽もやたらとPAで持ち上げて爆音だし最近の日本の音楽は音圧高いのばっかりで海苔弁みたいだし。ライブの現場でもめいめいがいろいろをモニターに返してもらうことで中音も爆音になっちゃったりしますし。ほとんどの人が「引き技」を忘れてしまってる気がします。楽器はダイナミクスによって様々な音質があります。そういう部分が忘れられてただ音量で押すような現場が非クラシックの現場では非常に多いと感じます。ダイナミクスの抑揚を効果的に使うことのお手本はカウント.ベイシーでした。彼らの暗黙のルールは「演奏中に現場でフレディ.グリーンの生のカッティングが聞こえていること」だったそうです。音量で押してるわけじゃないんだけど、生で見てると楽器が鳴ってるから大きな音に聞こえるんですよね。でもラウドに行く瞬間は決して多くないはずなんです。アート.ブレイキーのドラムだってあのナイアガラロールのインパクトは普段はソフトにやってるからこそダイナミクスの落差が際立つはずなんです。これ、プロでも見落としてる人が多いのではないかと感じることがあります。なかなかハイペースではできませんが、自分が主催するビッグバンドでは「ppを綺麗に響かせる」というのをサウンド作りの主眼においています。夏くらいには一度できたらいいかな、と思っています。