管楽器奏者にとっての効率の良いエアの使い方とは | music-geek

管楽器奏者にとっての効率の良いエアの使い方とは

管楽器奏者は管という共鳴体を振動させることで音を出すのだから、「エアをどう使うか」ということが最大の課題であると言えます。ここについては百花騒乱ですが、個人的には亡くなった友人で素晴らしい名手だったCarl Saundersの「最小限のエアで最大の効率の仕事をしろ」が結論だと考えています。トランペットのように管の細い楽器にはそもそも大量のエアは入らないですし、実は高い音になればなるほど必要とするエアの量は減るのです。これは例えていうと、ポンプ車のポンプとホースのノズルの関係に似ています。ポンプのパワーを上げるだけでは水は遠くに飛ばすことができず、パワーを最大限にしてノズルを絞り切ると最も遠くまで水を飛ばせるのと同じシステムであると思われるのです。つまり、高い音になればなるほど吐き出す息の圧を上げつつアパチュアは絞り込むイメージです。息の圧をコントロールする上では下のポジションによる口腔内の容積のコントロールもありますが、これは十分条件であるように考えられます。なぜなら口腔内の容積を絞ったところでエアのパワーがなければ効果がないからです。飛行機が高度を稼ぐためにフラップをあげてもパワーが伴わなければ空気抵抗が増えるだけで失速して落ちちゃうのと同じです。

 

エアのパワーをつけるにはクラウド.ゴードンがデモンストレイトしていたブリージング.エクササイズが非常に有効と思います。演奏している時のエアの量が少ないことは、口腔内のエアを使って循環呼吸ができることを考えればお分かりいただけると思います。ハーバート.クラークのテクニカル.スタディはワンブレスで最小の音量でできるだけ長くリピートすることが求められていますし、キャット.アンダーソンのいわゆるSilent Gは最小限の音量でできるだけ長くロングトーンをすることです。これはカールの言っていた「最小限のエアで最大の効率の仕事」をするためのトレーニングと言って良いと思います。金管楽器には「ラウドな音の楽器」というイメージが大きいですが、決してそんなことはありませんし、大量のエアは必要としません。セイント.ジャコムという非常に古い、しかし有名なエチュードがありますが、そこには「必要以上のエアを取ってはならない」と書いてあります。推測するに、エアを取り過ぎてしまうとオーボエと同じで「息を捨てる」作業が発生するのではないかと思えるのです(自分の体験的にもこれは感じます)。無駄に力まず、自分の呼吸器官のパワーを出す、ということがトランペットに限らず管楽器奏者全般に求められていることだと思われるのです。