ミューザ川崎シンフォニーホールの夏の恒例と化した「フェスタサマーミューザKAWASAKI2009」の神奈川フィル(金聖響指揮)の公演にに足を運んだ。オール・バーンスタイン・プロの今日はオーケストラにとっても指揮者にとっても面目躍如といえる内容だ。
コンサートマスターの石田泰尚を迎えたセレナードは手に汗握る力演だった。石田の表現力の豊かさと音楽に対する真摯な姿勢を感じる、「凛」とした筋が通った音楽作りで、見事なまでにオーケストラと協調しあっていたといえる。もう少しオーケストラにパワーが加わると、もっとメリハリの効いた、聞き応えある演奏になったような気がする。石田のまさに独壇場だ。
シンフォニック・ダンスでは、金聖響ならではの本場仕込みのアメリカン・サウンドが実に楽しい。音楽の「ノリに乗る」神奈川フィルは滅多に見られないものだが、今日はもっと「乗って」ほしい気もした。やっぱりパワーが足りないのか、まだまだやれる気もする。今日みたいな曲をやった時の神奈川フィルの表情は見ていて気持ちがいいのは自分だけか…。
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途中、舞台転換の間に金聖響のトークがあった。途中からコンサートマスターの石田も加わり、さながら不仲説に対する釈明会見だ。音楽評論家T氏のサイトでの書き込みをきっかけに広まった説だが、そんな次元の低い事を「ネタ」にするとは、大評論家の名が廃る。自分もその「コンサート日記」を読んだが、まるで音楽素人のマニアの書き込みを読んでいるかのようで、T氏への尊敬の念は今はない。堕ちたものだ…。
…って、自分もここで「プロ」の仕事を批判しては同じになってしまうので、今日の思うところはここまで。〔ミューザ川崎シンフォニ-ホール〕
【今日の曲目】
バーンスタイン:《キャンディード》序曲
バーンスタイン:セレナード
バーンスタイン:《ウェスト・サイド・ストーリー》より~シンフォニック・ダンス
【今日の出演者】
金聖響/石田泰尚(vn)/神奈川フィルハーモニー管弦楽団
小澤征爾音楽塾が取り上げる今年の演目は、フンパーディンクの『ヘンゼルとグレーテル』。言わずと知れたグリム童話の名作に基づいて作られたものであり、錚々たるソリストと小澤征爾率いるオーケストラがどんな世界を繰り広げるのか、興味に尽きない舞台だったといえる。ストーリーについては今更説明する必要はないだろう。グレーテルにカミラ・ティリングが、ヘンゼルはアンゲリカ・キルヒシュラーガーが歌い、ウォルフガング・ホルツマイアーやグラハム・クラークといった小澤のオペラで顔馴染んだ歌手もならんだ。主役の二人はさすがの実力派であり、見せ方、聞かせ方はお手の物。特に二人で奏でるアンサンブルは秀逸。第2幕最後の有名な夕べの祈りの場面は、彼女達の本領とも言える澄んだ美しさに溢れており、今日一番の白眉ともいえた。魔女のグラハム・クラークは今日のステージを際立たせた影の立役者とも言える。彼の歌唱は1996年に松本で歌った『ティレジアスの乳房』のラクーフ役が自分にはかなり印象に残っている。そのときも感じたことだが、彼が演じるコミカルな役回りは常にステージに変化をもたらし、脇役ながらに大きな存在感を見せているといえる。眠りの精・露の精のモーリーン・マッケイもまた、出番は少ないながらも印象に残る美しい歌唱を披露してくれた。「美しい」以外に形容できないほどに、実に美しかった。
小澤が率いるオーケストラは、若手の精鋭たちが揃っており「音色は」素晴らしい。小澤の指揮とは裏腹にオーケストラが上手く反応できていない箇所も多々、見受けられたが、それはマエストロの事だから本番までにはきっちり仕上げてくるだろう。演出については、自分の不勉強もあるかもしれないが、物足りなさを感じてしまった。
リハーサルでこれだけのものが出来上がるのだから、本番では音楽的にはもっと面白いステージになるのは間違いないだろう。本番が楽しみである(自分は行けないが・・・)。以上、自分の勝手な見解である。〔神奈川県民ホール〕
【今日の演目】
フンパーディンク:歌劇《ヘンゼルとグレーテル》(全3幕)
【今日の配役】
グレーテル:カミラ・ティリング
ヘンゼル:アンゲリカ・キルヒシュラーガー
母親:ロザリンド・プロウライト
父親:ウォルフガング・ホルツマイアー
魔女:グラハム・クラーク
眠りの精・露の精:モーリーン・マッケイ
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音楽監督・指揮:小澤征爾
演出:デイヴィッド・ニース
装置:マイケル・イヤーガン
衣装:ピーター・J・ホール
照明:高沢立生
オリジナル・プロダクション:ザ・ダラス・オペラ
児童合唱指揮:長谷川久恵
児童合唱:東京少年少女合唱隊
管弦楽:小澤征爾音楽塾オーケストラ
最近、忙しすぎるあまりに「ゆとり」が全くない。特に心のゆとりは皆無だ。「このままではまずいなぁ」と思っていたところに、知人に誘われて今日は工藤重典の演奏に急遽、足を運んだ。
ヴィヴァルディのフルート協奏曲集作品10の全曲演奏会だった今日だが、フルーティストと弦楽器のバランスが実に絶妙。息のあったアンサンブルを堪能できた。とりわけ第3番『ごしきひわ』と第6番が印象的。『ごしきひわ』は、フルートが奏でる鳥の囀りに始まり、終楽章で聞かせた色鮮やかにして技巧的な音楽の躍動は、今日一番の白眉だったといえる。第6番もまた冴えに冴えた工藤の独壇場だ。オクターブの動きが特徴的なイントロに始まり、次々と表情を変える楽想を見事なまでに描き分けていたといえる。モダンな響きに聞くヴィヴァルディの世界ではあったが、精緻なアンサンブルと豊饒な表現力に今日はただひたすらに感服である。なにより、演奏家が音楽を心から楽しんでいる様を見れた事が一番の収穫だったかもしれない。(私情だが)ここ最近の日々の出来事に疲れきった自分にとって、そう痛感させられた公演だった。以上、勝手な見解である。〔浜離宮朝日ホール〕
【今日の曲目】
ヴィヴァルディ:フルート協奏曲集作品10
【今日の出演者】
工藤重典(Fl)/ラ・ストラヴァガンツァ東京

現代最高のメゾソプラノといえるヴェッセリーナ・カサロヴァが新国立劇場に初登場。演目はロッシーニの『チェネレントラ』ということもあり、期待は自ずと膨らむ。カサロヴァの脇を固める歌手たちもシラグーザ以下、ロッシーニ歌いのスペシャリストが並ぶ。バイエルン州立歌劇場のプロダクションを借りてきたステージは無駄の一切を排除したシンプルなもので、ロッシーニのオペラを心置きなく堪能できる、出演者にも聴衆にも、まさに真っ向勝負といえるものだ。

タイトルロールのみならず、すべての歌手たちにアジリタ唱法を駆使するという、超絶技巧に溢れたオペラで、ロッシーニのテンポのよい音楽とストーリーで聞き手を常に楽しませてくれた。カサロヴァの歌唱は期待通りのもの。『灰かぶり姫』とは思えない存在感を醸し出し、聴き手を常に魅了し続けてくれた。ドン・ラミーロ役のシラグーザは、甘い歌声が印象的。カサロヴァ以上の存在感を見せていたともいえ、圧巻だった。今日のステージは、彼なくしては語れないだろう。今日一番の収穫とも言える。アリドーロ役のグロイスベックもまた、自らの世界を確立していた。説得力のある歌唱にため息が出てしまった。超強力な海外勢に負けず劣らず好演していたのが幸田浩子と清水華澄だ。幸田の歌声は何度も聞いたことがあり、クロリンダは想像通りの当たり役。清水の安定した歌唱は、今後の活躍に大きな期待を持たせてくれる内容だった。

誰もが知っている「シンデレラ」のストーリーこれほどまでに贅沢なキャストで聞けるのは、そうあることではない。また見てみたくなる気持ちのよい楽しい舞台だったといえる。〔新国立劇場オペラ劇場〕

【今日の演目】

ロッシーニ:歌劇《チェネレントラ》(全2幕)

【今日の配役】

ドン・ラミーロ:アントニーノ・シラグーザ

ダンディーニ:ロベルト・デ・カンディア

ドン・マニフィコ:ブルーノ・デ・シモーネ

アンジェリーナ:ヴェッセリーナ・カサロヴァ

アリドーロ:ギュンター・グロイスベック

クロリンダ:幸田浩子

ティーズベ:清水華澄

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指揮:デイヴィッド・サイラス

演出・美術・衣装:ジャン=ピエール・ポネル

合唱指揮:三澤洋史

合唱:新国立劇場合唱団

管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団


アマチュア合唱団にはアマチュアなりの魅力があるし、それ相応の聞き方がある。指揮者の色が鮮明に浮き彫りになるアマチュア合唱団は、指揮者の個性が如実に現れ、音楽に対する姿勢までもが音楽に見えてくる。
武蔵野合唱団は云わずと知れた小林研一郎の色に染まったコーラスだ。この合唱団は緻密なまでに洗練されたハーモニーを堪能するコーラスではない。アンサンブルを超越した熱い情念と、庶民的な雰囲気を味わえる合唱団であり、その空気は独特。

今日の演奏会もまたコバケン・ワールドが炸裂といった感じだ。コバケンの魂のこもった棒に合唱団が力演で応える。まさに勢いで乗り切ったといっても過言ではない。子音の処理やフレージングは如何にもコバケン流。ソリストの二人では、青戸知の好演がひと際、印象的。毎回、彼の演奏を聞くたびに感じるが、その表現力の幅に年々、磨きがかかってきていると思う。あっぱれだ。オーケストラも力演。恒常的に活動しているオーケストラではないためにおきるアンサンブルの乱れがもったいない気がするが、音色は至って美しい。ホルンがもっと頑張れば、なお素晴らしいオーケストラに飛躍できるに違いない。そんな思いを抱かせてくれる演奏会だった。

蛇足だが、指揮者が入場し、指揮台に立ち、棒をゆっくりと挙げて今から静謐な第1曲目の開始。そこで会場内に響き渡る遅れ客の足音。堪らず指揮台から下りて、もう一度集中力を高めるマエストロ。そして第1曲目が終わると、おもむろに指揮台をまた下りるマエストロ。舞台上をエア・コンディションの関係で風が吹いているらしく、空調の調整をお願いしに下手袖にはけるマエストロ。なんともお粗末だ。世界最高級の音響と歌っているホールなのだから、全体的にもう少しケアをして欲しい。公会堂だからあまり多くを求めてはいけないのかもしれないが・・・。以上、勝手な見解だ。〔杉並公会堂大ホール〕
【今日の曲目】
ブラームス:ドイツ・レクイエム
【今日の出演者】
小林研一郎/永崎京子(S)/青戸知(Br)/武蔵野合唱団/横浜シンフォニエッタ