先週の金曜日、神奈川フィルの定期演奏会でマーラーを聴く。人それぞれ、このマーラーの第3番には思い入れがあるに違いない。自分は、アバドとベルリン・フィルの横浜での公演を学生時代に見て以来となる、ここ横浜でのこの曲。
今の神奈川フィルにしてみたらば、正直言って無謀な挑戦だ。100分にも及ぶこの曲とどう相対するのか。実に楽しみだった。
揮者の解釈やオーケストラの力量など、いろいろと思う所はあるが、なんだか少しではあるが明るい未来が見えた気もする。

頑張ってくださいね!!横浜のため、神奈川のため、日本の文化のために!!

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12年前、ケント・ナガノが指揮するリヨン歌劇場管弦楽団の演奏を2晩に亘って聞いた。その時の曲目は武満、ラヴェル、ストラヴィンスキー。その時の印象は、実に好意的なもので、それから12年を経てどんな演奏を聞かせてくれるのか、楽しみに足を運んだ。
ふくよかな木管、鳴らし過ぎない金管、ハイセンスな打楽器。そこには常に品を感じる事ができ、フランスのオーケストラの魅力を体言していたといえる。
派手な事をやっているというわけではなく、歌いすぎるというわけでもない。そのバランス感覚はマエストロならではの魅力なような気がする。4管編成のオーケストラでありながら、音量で圧倒された印象が残らなかったのも、その絶妙なバランス感覚こそができる代物だと感じた。アンコールでは、フォーレのパヴァーヌと、ベルリオーズのラコッツィ行進曲の2曲が用意された。これもまた粋な選曲であり、オーケストラの魅力を存分に味わう事ができた。
奇を衒わず真っ向勝負のプログラムで、こんなにも満足感を得られた演奏会は久しぶりだ。そんな感じの個人的見解である。〔横浜みなとみらいホール〕
【今日の出演者】
大野和士/フランス国立リヨン歌劇場管弦楽団
【今日の曲目】
ドビュッシー:牧神の午後への前奏曲

ストラヴィンスキー:バレエ音楽《火の鳥》より

プロコフィエフ;バレエ音楽《ロメオとジュリエット》より

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奇才、パーヴォ・ヤルヴィが放つオーラは今日も健在だ。
2006に横浜でベートーヴェン・ツィクルスを大成功させ、蜜月な関係のパーヴォとホールだが、その関係は納得の行く成果となっている。ホールに響き渡るオーケストラのサウンドが、その全てを物語っており、今日もまた彼の斬新なアプローチに酔いしれた。
何と言っても今日の最大の収穫は、前半のアメリカ・プロだ。殊に、バーンスタインのディヴェルティメントは秀逸だった。パーヴォが以前にバーミンガム市響と残した録音の印象をそのままに聞いた自分だが、全くもってその残像はない。遊び心に溢れたこの作品を表情豊かにかつ、洒落っけたっぷりに演奏したマエストロに脱帽である。こんなにも楽しい作品だったのか…、流石の表現力である。ラプソディ・イン・ブルーでは独奏にツィメルマンを迎えた。個人的には「無駄に贅沢」なキャスティングに思えてならない。どこか、ヨーロピアン・ジャズの雰囲気を身に纏ったような抑制されたパッションは自分にしてみたら物足りなさを残してしまった感じがする。
メインのドヴォルザークに交響曲もまた、マエストロの魅力を存分に味わえた内容。常に響きはアメリカ的であったが、聞かせ所を弁え、ノスタルジックにこの作品を仕上げたといえる。
「なにかやってくれるだろう」という思いを裏切る事をしないマエストロではあるが、余りにもこれまで(東響で初来日した時や横浜のベートーヴェン・ツィクルスの時)のインパクトが強烈過ぎた。そのあまり、今日もかなりのインパクトではあったにも拘わらず個人的には「想定内の想定外」に止まってしまった。恐らく、多くの方が感激したであろう演奏だったに違いない。ただ、自然とハードルが高くなり、彼の有り難みに「麻痺」してしまった自分がいるような気がする。そう感じるお客さんが増えない事を願う自分だ。以上、個人的な感想である。〔横浜みなとみらいホール〕
【今日の出演者】
パーヴォ・ヤルヴィ/クリスティアン・ツィメルマン(pf)/シンシナティ交響楽団
【今日の曲目】
バーンスタイン:《キャンディード》序曲
バーンスタイン:ディヴェルティメント
ガーシュウィン:ラプソディ・イン・ブルー
ドヴォルザーク:交響曲第9番ホ短調作品95《新世界より》
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ドイツのバンベルク交響楽団の来日公演へ足を運んだ。オール・ブラームス・プログラムということで、正に真っ向勝負といえるプログラム。悲劇的序曲、ヴァイオリン協奏曲(クリスティアン・テツラフ独奏)、交響曲第2番の3曲がならんだが、どの演奏も奇を衒うことなく、オーソドックスな演奏。全く持って音楽的には新しいことはしておらず、物足りなさを感じる人もいたかもしれないが、個人的には、ドイツのオーケストラで「純然たる」ブラームスを聞けたことはこの上ない喜びだ。新しいことをしていないにもかかわらず、古さを微塵も感じさせない演奏といえ、ドイツ人によるドイツの作曲家の演奏・・・、自分の理想とするシチュエーションともいえる。邪念を取り払い、心から音楽に接することが出来たといえる。 今日は、あまり深いことは考えず・・・以上、浅薄な感想である。〔サントリーホール〕
【今日の演奏家】
ジョナサン・ノット/クリスティアン・テツラフ(Vn)/バンベルク交響楽団
【今日の曲目】
ブラームス:悲劇的序曲作品81
ブラームス:ヴァイオリン協奏曲ニ長調作品77
ブラームス:交響曲第2番ニ長調作品73
最近は忙しさのあまり、全く更新ができておらず、落ち着いて音楽すら聞けていない。そんな窮地の中、今日を逃しては一生後悔すると思い、足を運んだのがマレーシア・フィルの日本ツアーだ。一昨年、何気なくCDショップで手に取った彼らのロシアものの録音に魅了されて以来、そのサウンドの虜になった自分。そんな思いが詰まった今日のプログラムはスメタナ、ブラームス、ドヴォルザークの作品が列ぶ。個人的には、録音の印象が鮮烈だったロシアの作品で彼らの演奏を聞いてみたいと思っていたが、自分のそんな浅はかな思いは大いに裏切られた。彼らは想像以上に『ただ者』ではない。そう感じさせる演奏だった。
スメタナでは、ヴルタヴァ川に吹く「風」を感じさせる滋味深い弦と木管が印象的。ブラームスでは一変、重厚なドイツ的サウンドに変貌したのには度肝を抜かれた。だからといって重苦しくは全くならず、レーピンの圧倒的なまでに説得力ある演奏と互角に渡り合っていた。両者ともに圧巻である。『新世界』では、交錯するボヘミアとアメリカの空気を見事なまでに描き分けており、フロールの音楽の魅力でもある絶妙なテンポ感、フレージングが冴え渡っていた。アンコールにはハンガリー舞曲を2曲。これがまたジプシーの香りが色濃い演奏で、最後まで聞き手を翻弄して止まない変容ぶりだ。彼らの演奏に敢えて物申すなら、管楽器の歌い出しに若干の粗さが目立ったのが玉に傷。しかし、それを割り引いても多くの収穫があったステージだ。
それにしても、曲によって信じ難くも大胆なまでに変容する『色』は不思議でならない。それは、彼らの多国籍な特徴も去ることながら、若いオーケストラであるが故の、順応性の高さなのか…とも思えるが、やはりどうにも分析しきれない衝撃だ。

アジアのオーケストラという修飾は彼らには無用だ。今日の演奏は世界のトップ・オーケストラに名を連ねるに恥じない演奏だった。後は、このオーケストラが五年、十年と活動を続けて行く中で、名実ともに世界一流として認められる日が来る事を願うばかりである。そんな期待を抱かせる名演だった。以上、勝手な見解である。〔東京オペラシティ・コンサートホール〕
【今日の出演者】
クラウス・ペーター・フロール/ワディム・レーピン(vn)/マレーシア・フィルハーモニー管弦楽団
【今日の曲目】
スメタナ:交響詩《ヴルタヴァ》
ブラームス:ヴァイオリン協奏曲ニ長調作品77
ドヴォルザーク:交響曲第9番ホ短調作品95《新世界より》
(アンコール)
ブラームス:ハンガリー舞曲第5番
ブラームス:ハンガリー舞曲第6番