中日春秋
2014年6月26日
駅へ向かういつもの道。押しボタン式の信号で渡ろうとしたら、おばあさんがボタンに手を伸ばすところだった。だが、押す構えのまま、動きを止めている。けげんに思っていると、目の前を路線バスが通り過ぎていった
▼ようやく青信号になり横断歩道を渡り始めると、おばあさんがはにかんだような笑みを浮かべつつ、小さな声で話し掛けてきた。「待たせてごめんなさいね。いつもお世話になっているので」
▼おばあさんは横断歩道の近くまで来ていたバスを信号で止めないよう、通り過ぎるのを待ってボタンを押したのだ。自分がいつも頼る「足」への感謝を込めた、さりげない心遣いだった
▼鹿児島県で起きたJR九州の特急脱線事故で、運転士が無料通信アプリLINE(ライン)に現場の写真を投稿し、「死ぬかと思った」と書き込んでいたという。乗客の命を預かるプロの口から、何と軽い言葉が発せられることか
▼名古屋では市バス運転手のミスが後を絶たないそうだ。免許証を忘れたり、寝過ごしたり。そんな過ちがここ三カ月弱で二百件近くになるというから、気が気ではない
▼精密時計のごとき日本の公共交通網を動かす現場の苦労、ストレスは相当なものだろう。しかし、声に出さ ずとも感謝と信頼を寄せる人は無数にいる。「みんなの足」を担うすべての人たちに、あのおばあさんの笑顔を見せてあげたかった。
2014年6月26日
駅へ向かういつもの道。押しボタン式の信号で渡ろうとしたら、おばあさんがボタンに手を伸ばすところだった。だが、押す構えのまま、動きを止めている。けげんに思っていると、目の前を路線バスが通り過ぎていった
▼ようやく青信号になり横断歩道を渡り始めると、おばあさんがはにかんだような笑みを浮かべつつ、小さな声で話し掛けてきた。「待たせてごめんなさいね。いつもお世話になっているので」
▼おばあさんは横断歩道の近くまで来ていたバスを信号で止めないよう、通り過ぎるのを待ってボタンを押したのだ。自分がいつも頼る「足」への感謝を込めた、さりげない心遣いだった
▼鹿児島県で起きたJR九州の特急脱線事故で、運転士が無料通信アプリLINE(ライン)に現場の写真を投稿し、「死ぬかと思った」と書き込んでいたという。乗客の命を預かるプロの口から、何と軽い言葉が発せられることか
▼名古屋では市バス運転手のミスが後を絶たないそうだ。免許証を忘れたり、寝過ごしたり。そんな過ちがここ三カ月弱で二百件近くになるというから、気が気ではない
▼精密時計のごとき日本の公共交通網を動かす現場の苦労、ストレスは相当なものだろう。しかし、声に出さ ずとも感謝と信頼を寄せる人は無数にいる。「みんなの足」を担うすべての人たちに、あのおばあさんの笑顔を見せてあげたかった。