ボカロのローリンガールが大好きなので、この曲をイメージして書きました。
シズちゃん目線で書いてますが、曲の意味での視点は臨也です。

毎回オチを考えずに突発的に書くのですが、今回はとにかくハッピーエンドを目指しました。
シリアスや死ネタの方が個人的に書きやすいので、最後の方は書いててキツかったです。2までは楽しかったんですがね…。

最後のシズちゃんのセリフはご想像にお任せします。
私は「てめぇはオレのもんだ」くらいワイルドでもいいけれど「愛してる」「お前が好きだ」でもいいですよね←

では、お粗末様でした!
「んぅっ、う、はぁ…」

薄い唇をこじ開けて舌を入れると、口内を切っているのだろうか、鉄分臭い味が舌を伝った。

(血生ぐせぇ…)

無抵抗なのをいいことに、奥にひっこませていたそれを絡めようとすると、消極的ながらもオレの舌を受け入れてきた。
ねっとりとした舌の触感にクラつきそうになる。

どちらともなくゆっくりと唇を離せば、溢れた唾液が口端から垂れ落ちた。それをクイッと手の甲で拭い取る。

目の前にはオレと同じく口元を唾液で濡らし、真っ赤な顔で息を切らすイザヤの姿。
涙で潤む瞳を細めてオレを見るもんだから、どうしようもない気持ちになってしまった。

「な…な、んで…?」
「てめぇが好きだ」

紅い瞳が見開いた。
信じられないとでもいうように、パチパチと瞬きを繰り返す。

「なんで?!だって、嫌いでしょ?オレが死んだら嬉しいでしょ?」
「てめぇもオレの死を望んでるんだろ?」
「違う!!」

その言葉は叫ぶように放たれた。
本人は歯を喰いしめ、涙をためた瞳でオレを睨んでいる。

「最初は大嫌いだった。フィーリングもくそもないし、化け物のくせに皆に愛されてるし、理屈なんて通じないし…」

一瞬、心が痛んだ。
化け物、と。ハッキリ言われるとやはり辛いものがある。
そんなオレを察してか、イザヤはごめんねと謝ると

「でもね、だんだんシズちゃんに惹かれていくオレがいたんだ。絶対に死んでほしくないのにあんなことしか言えなくて…。シズちゃんもいつも本気でオレを殺しにかかってく「それは…それは、オレもお前と同じだ。もうまどろっこしいことはいらねぇだろ?」

好きなんだよ、折原臨也。

そう言うと、とうとう目の前の男は唇を歪ませてグズグズと泣き出した。
ギュッと閉ざされた目からボロボロと涙を垂らして鼻を啜る姿は、
今までオレが見てきたコイツの中で、一番人間くさかった。

その顔を隠すように軽い口づけを何度も落とす。
チュッチュッと音を立てて、角度を変えながら
泣き止むまでずっと、ずっと…。



「シズちゃん大好き」
「おう」

その日、オレたちは初めて二人きりで帰った。
イザヤは上機嫌でさっきから何度も好きだと繰り返す。
そしてオレにこう尋ねるのだ

「シズちゃんは?」
「さっき散々言っただろうが!」
「えー?そうだっけぇ?」
「しらばっくれんじゃねぇ!」

プクッとガキのように頬を膨らませる姿にイラッとくる。
それでも繋いだ右手を振りほどけないのは、惚れた弱みというやつなのだろう。

「あ゛ー仕方ねぇな!一回しか言わねぇから耳の穴かっぽじってよーく聞け!!」

キャンキャン五月蝿いコイツの背中を抱き寄せて、耳元で囁いた。

「     」

途端に黙りこんでズルイ、とオレから目を逸らす。

ズルイのはお前だろ。
そんなに顔赤くされたら加虐心が擽られる。
…そんなこと絶対に言ってやらないが。

明日からコイツとどうやって過ごせばいいんだろうとか、新羅や門田にどう説明しようだとか考えたら胃が痛む。けれど、

「キスしてよ」

今だけは、腕の中で微笑むコイツの存在にただただ満たされていたい。
雲に隠れていた月が姿を現した。
幾分か明るくなり、イザヤの紅い眼が月光に反射して輝く。
猫のように妖艶に細められた目の中で、たしかにその瞳はオレを捕らえていた。

オレはその視線を逸らすことはできない。
イザヤもオレへの視線を逸らそうとはしない。

カッターシャツが汗で湿っぽくなっているのさえ、気にならない。
ただ、こいつから意識を逸らしたら殺されると本能が警告した。

「どうだった?初めてのキスは、」
「ひっ…」

いきなり頬に片手を添えられて上擦った声が出た。
カッと、羞恥に頬が染まったのが自分でも分かる。
イザヤはそんなオレに気をよくしたのか、喉を軽く鳴らして話しを続けた。

「正しくは人口呼吸だけどね。…唇同士が触れたんだから、キスみたいなもんでしょ?」

イヤだったよねぇ?殺したいほど嫌いな人間にそんなことされてさぁ、と言葉を発した瞬間。鋭い瞳がたしかに…
たしかに一瞬揺らいだのだ。
オレはそれを見落とすことが出来なかった。

二人の間に静寂が流れる。

呼吸音が聞こえる。
唾液が喉を下す音が聞こえる。
オレ一人の心臓の音だけが五月蝿く聞こえる。

(止まれ、止まれよクソッ)

念じても焦燥感が募るだけなのは分かっている。
けれど、気づいてしまった自分の感情をコイツに晒すなんて…
絶対出来るはずない。否、晒してはいけない。

いったいどれだけの時間が経ったのだろうか。きっと数分だけなのだろうか、何時間にも感じた。
額に汗が滲んできた頃、先に動いたのはイザヤだった。

「さあ、帰ろうか…気づいてないと思うけどもう8時なんだよ」

目の前に突き出された携帯には、たしかに8時と示されている。それを短ランのポケットに突っ込むと、いつもの笑顔を崩さないままにスッとオレから顔を離した。

(は?)

呆然と今だ横たわるオレを余所に、何事もなかったかのように立ち上がるとボストンバッグを肩に背負ったのだ。

さっきのは何だったんだ?
散々期待させといて、裏切るのか?
許さない。許せない。
(絶対、逃がさねぇ!)

プツンと頭がキれたと同時。オレは渾身の力を込めて立ち上がり、走っていた。
そして背を向けて扉を開けようとするソイツをぶっ飛ばしたのだ。

ガッシャン、と軽い身体がフェンスにブチ当たる。
そのままドサッと崩れ落ちた身体に馬乗りになると、切れた唇に乱暴に口づけた。