「静雄はよ、女に興味はねぇの?」
真昼のマックは実に騒がしい。相手の話を聞き取れないこともしばしばある。
しかし、このトムの発言は静雄の耳にビビビッと響いた。それはまるで電波通信のように。
「え、えええ」
「っはは、なぁに躊躇ってんだよ」
そんなにビックリすることじゃねぇだろ?
トムはケラケラと笑いながら、ポスポスと金髪を柔らかく叩いた。
「そ、そういうトムさんはどうなんすか?」
「そりゃあオレだって男だべ?」
デカくて形のいい胸とか柔らかく引き締まった腰のラインとか大きい尻とか…
たまんねぇよなぁ?とシェーキを掻き混ぜながら静雄に話を振る。
そうっすね、と同調するも、内心静雄はガックリしていた。もし犬耳が生えてるならシュンッと垂れ下がっているだろう。
それも仕方のないことだ。誰だって恋人にそんなこと言われて楽しいはずはない。
けれど、内心で諦めている部分もあった。
仕方ないよなー、トムさんはバイだし。昔から女好きだったし。
と。こんなことを自分自身に言い聞かせて無理矢理納得しようとしている自分が虚しい。
静雄はひどく憂鬱になり、立ち上がった。
「トイレ行ってきます」
「あ、今並んでるぞ?列が短くなってから行けよ、な?」
「っす…」
トムに言われたら逆らえない。平和島静雄は田中トム相手には非常に従順なのだ。
例えるならば、猛獣使いと虎のように。
「さっきの続きだけどよ…」
まだ続きがあるのか。あーまじトイレに並んでる奴ら全員爆発しろよ。
そんなことを考えながら、頭に血管が浮き出そうになるのをギリギリで押さえ込む。
そして、何すか?と一言返してイチゴシェーキをキュイキュイと啜った。
イライラしたときには糖分摂取が1番なのだ。ちなみにこれはトムに中学時代言われたことだ。
「オレにだけ従順な子っていいよな。料理を美味いって食う子とかもマジでタイプだわ」
な?とトムは静雄の頭をワシャワシャ撫でて、悪戯が成功した子供のようにニヤッと笑った。
カァッと静雄の顔が赤くなる。
ああ、もうトムさん酷い!確信犯め!でもそんなトムさんちょーカッコイイ!
結局のところ、静雄はトムにゾッコンなのだ。
(あ、トイレ空いたべ?)
(もう大丈夫っす…)
(お前まじ可愛いのなー)
(っ…可愛くないっすよ)