蓮如上人の『御文』を読む -9ページ目
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『御文章』・『御文』の説明

『註釈版聖典 第二版』(本願寺出版社)の説明

 本書は第八代宗主蓮如上人が門弟の要望に応えて、真宗教義のかなめを平易な消息の形式で著されたものといわれている。また、宗祖親鸞聖人の『御消息』に示唆を得て作られたともいわれている。したがって、どんな人にも領解されるように心がくばられ、文章をかざることもなく、俗語や俗諺までも駆使されている。

 五帖八十通の『御文章』は『帖内御文章』ともいい、多数のなかよりとくに肝要なものを、第九代宗主実如上人のもとで抽出・編集されたものである。時代別にみると、吉崎時代四十通、河内出口時代七通、山科時代五通、大坂坊舎時代六通、年紀が記されていないもの二十二通となっていて、教団が飛躍的に拡大した吉崎時代のものがもっとも多く、上人が一般大衆を精力的に教化されたことがうかがえる。

 全般の内容をみれば、当時の浄土異流や宗門内で盛んに行われていた善知識だのみ、十劫秘事、口称正因などの異安心や異義を批判しつつ、信心正因・称名報恩という真宗の正義を明らかにすることに心を砕かれている。とくに「なにの分別もなく口にただ称名ばかりをとなへたらば、極楽に往生すべきやうにおもへり」という傾向に対して、他力の信心の重要性が説かれている。また本書の随所に、他力回向の信心を「たすけたまへと弥陀をたのむ」と表現されることは、上人の教学の特色である。


『真宗聖典』(東本願寺出版部)中『五帖御文 付 夏御文・御俗姓』の説明

 蓮如上人の御遺文は、今日約二二〇通余知られている。蓮如上人御遺文を五帖に編集したのは実如上人時代である。滋賀県近江八幡の広済寺に実如上人御真筆の「実如直筆御文証判五帖一部」が伝わっている。実如上人の後、証如上人が開版せられた。証如開版本はそれである。その他、名塩の教行寺に実悟の写本が伝わっている。
 本聖典では広済寺本の実如上人御真筆五帖一部を底本とし、大谷大学蔵証如開版本をもって対校した。
 夏御文は、名塩教行寺本を底本とし、稲葉昌丸編「蓮如上人遺文」所収本をもって対校した。
 御俗姓御文は、大谷大学図書館蔵実如上人証判本を底本とし、三重県法雲寺蔵蓮如上人御直筆本、東本願寺依用本をもって対校した。


『真宗聖典』(法蔵館)の説明

本願寺第八代蓮如上人が、真宗の正意を愚昧の男女に訓へんがため、最も平易に述べて、時々の宗徒に与へられたる消息集で、五帖にわかち八十通を収む。初の四帖に収むるところは年月順となし、最後の一帖には年月なきもののみ収めてある。一帖目第一通は文明三年五十七歳の作、四帖目の終は明応八年三月八十五歳御入滅の四ヶ月前、即ち明応七年十一月下旬の作である。編者は上人の御孫円如法師といふ。この五帖の外に、なほ『御俗姓御文』『夏御文』『帖外御文』がある。真宗の今日盛なるは『御文』の力によるところが少くない。
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