今日は「I am a Model」を取り上げたいと思います。
知っている方は知っているでしょうが、1983年に出た矢沢永吉さん9枚目のソロ・アルバム。
英語版の「YAZAWA」(1981年)と「It's Just Rock'n Roll」(1982年)を含めると、11枚目になります。
また、私が何度か言及したエンジニア、ジム・アイザクソン氏の遺作でもあります。
今ファンの人は本作にどのような印象をお持ちでしょうか?
恐らく発表当時と今とでは大分異なった感想になっているのではないかと思います。
あの時は、どうしても『「P.M.9」の次のアルバム』との構えた態度を取りがちでした。
また、1983年のツアーでは発売の延期に伴い、本作からは2曲しか披露されず、少し印象が薄かったのも確かです。
しかしながら、最終的には全曲がコンサートで歌われるという快挙も達成しているレコードである点を忘れてはなりません。
A面
1. ROCK YOU HIGH 1984
2. ミスティ 1983
3. WHY YOU... 1983
4. グッド・タイム・チャーリー 1984
5. このまま… 1988
B面
1. 酔えないシャンペン 2004夏
2. M3/4 1985夏
3. せめてダンシング 1985夏
4. シーサイド#9001 2005
右側の数字は、初演されたツアーの年です。
ただし、私は全てのツアーに参加してるのではないので、『もっと早く披露されているよ!』とのご指摘もあろうかと思いますが、その際は笑ってお済ませ下さい(苦笑)
なお、1985年と2004年のところに『夏』と記しておいたのは、両年は夏と冬のツアーがあったからです。
ちなみに、私は1985年冬のツアーは未見。
前作と異なり、曲ごとの参加ミュージシャン表記はありません。
だから、誰がどの曲でプレイしているか想像するしかないのですが、ある程度予想の付く部分もあります。
ドラムスはジェフ・ポーカロ1人だし、キーボードはマーク・ジョーダン、シンセサイザーはアラン・パスカと分けて表記されており、その判断は比較的容易です。
また、パーカッションを担当しているのもボビー・ラカインドのみ。
一方、ギターとベース・ギターが複数なのは難点かもしれない(苦笑)
ツアーに参加したキース・ヌードセンと名ベーシストのデニス・ベルフィールドの不参加は少し残念です。
逆に、アルバムでピアノを弾いているマークはツアーの方には参加していません。
代わりはジョーイ・カルボーンでした。
ジョーイ・カルボーンとアラン・パスカとのコンビネーションも素晴らしい演奏でしたが、ジョーイはマークと違ってヴォーカルを取らなかったです。
2人もキーボード奏者が居るのは贅沢過ぎる?
いや、「P.M.9」でもライヴはともかく、レコードは基本的にピアノもしくはエレクトリック・ピアノとシンセサイザーの2本立てだったので、スタジオ盤に基づいた編成をライヴで組んだとも言えるでしょう。
実際、先行発売されたシングルの“ミスティ”がステージで展開された時は、本当に別世界にいるような夢心地でした。
エレクトリック・ピアノのイントロから始まって、そこにシンセサイザーが重なる涼し気なサウンドですよ!
シングルは私は持っていなかったものの、コンサートへ一緒に行った友人から聴かせてもらっていました。
だから、レコードで聴いた音がフェスティバルホールのステージで一気に広がる空気感を味わいました。
それは“WHY YOU...”も同じ…ではないです。
レコードでは“Run & Run”と似ていて、ルーズな乗りですよね?
ヴォーカルやドラムスもオフ気味に録られてあり、あんまり作り込まれていない。
ところが、これがライヴとなると逆転し、物凄い一体感でこちらに迫ってくる歌と演奏でした。
客席の反応もそれに呼応し、熱気に包まれていました。
もしかしたら、ライヴの“WHY YOU...”でジョン・マクフィーはスライド・ギター(ボトルネック奏法)をプレイしていたかもしれません。
“シーサイド#9001”はレコーディングのマジックが復活したように感じられます。
♪テラスにひろがる~♪の『テ』から入る“バシーン”と響く打楽器の音があるでしょ?
あれってタンバリンを固定してスティックで出した音なのでしょうか?
とにかく異様に響き渡っていますね(笑)
それと、ピアノの陰に隠れがちですが、ヴィブラフォンの音も良いアクセントになっています。
ピアノとヴィブラフォンとホーン・セクション、そして間奏と終盤で流れるストリングス・シンセサイザーが同曲の雰囲気を決定付けていると言えるでしょう。
左chに定位するリズム・ギターの音は殆ど前面に出ません。
この曲ではギターは完全に脇役かと思ったら、終盤永ちゃんのヴォーカル~最後の叫び~を引き取る形で素晴らしいソロが右chから登場します。
まるでヴァイオリンのような高速フレーズで、恐らくアームを巧みに操ったプレイだと思いますが、いずれにせよ名演と呼ぶに相応しいプレイです。
しかも、ギター・ソロで曲を終わらせず、モノローグで〆るのも粋なやり方だと思います。
アルバム全体はジム・アイザクソン氏らしく一体感のある音作りではありますが、本作ではリズム・ギターとリード・ギターがきれいに左右に分かれており聴きやすい。
また、ピアノの音が鮮やかなのも特徴です。
それはA面1曲目の“ROCK YOU HIGH”から明白に感じ取れます。
ライヴ向けのアレンジなのだけど、このトーンはレコードでしか表現できない…みたいな。
残念ながらいまだリマスターされておらず、近々のリマスター盤の再発が望まれるところ。
CD化自体はとても早かったですが、それが逆に裏目に出ています。
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