1981年3月31日、春休みを利用して青森県弘前市内の祖父母宅に遊びに来ていた私は、奥羽本線弘前駅9:20発の627列車に乗り込みました。
いや、正確に言うと「遊びに来ていた」という表現は間違っているかもしれません。当時、国鉄乗りつぶし（全路線踏破）を始めたばかりの私は、まずは身近な所からということで、祖父母宅を利用できる東北方面から攻めようと決めての訪問で、言ってみれば、タダで宿を借りてしまおう、という感じでした。
東京からの往路にも、仙台までは特急を利用しましたが、その後は各駅停車に乗り換え、東北本線利府支線、花輪線を乗りつぶしてきたところでした。
さて、いつもは一人旅の私でしたが、この日、627列車には祖父が一緒に乗り込みました。私がどんな旅をしているのか興味があったようです。
浪岡駅停車中に上野からの特急「あけぼの1号」に抜かされ、青森駅10:34着。すぐに津軽線929Dに乗り換え、10:39発車。
気動車キハ22に揺られること約1時間半、12:10に終着・三厩駅に到着しました。
津軽線三厩駅 1981年3月31日 ※その他のデータは不明（他の写真も）
津軽半島最北端駅、三厩駅。当時は「みうまや」と読みましたが、今は「みんまや」と改められています。
半島突端の竜飛岬へはここからそう遠くありませんが、折り返し列車932Dは12:58発。48分ではとても行けそうにありません。
このあたりは記憶が定かではないのですが、こんな写真を撮ったりして時間をつぶしていたようです。
津軽線三厩駅 1981年3月31日
ちょうど昼飯時でしたが、昼食をとった記憶もありません。「JTB時刻表」2010年12月号特集の「駅旅本線」という記事でこの三厩駅が取り上げられ、駅から徒歩15分の鮨屋で「みんまやマグロ」が味わえる、と書かれていますが、そんな所へ行ったとも思えず、駅前食堂か何かあったのでしょうか。
さて、沿線風景を巻き戻すように青森駅まで戻り、14:43着。次に目指すは黒石線です。青森駅15:19発846列車酒田行き（!!）は、旧型客車への期待に反して50系客車でした。
青森駅 1981年3月31日
当時はこんな長距離列車が数多く残っていました。この列車が終着の酒田駅に着くのは23:17です。所要時間は約8時間。
しかし、私たち2人は、わずか1時間弱乗車しただけの川部駅で下車。16:06着。16:52発の黒石線黒石行き137D列車に乗り換えました。キハ40単行です。
奥羽本線川部駅 1981年3月31日
黒石線は、奥羽本線川部駅から分岐し、途中、前田屋敷駅という由緒正しそうな名前の駅を経由して黒石駅までの6.6kmを結んでいたローカル線でした。
先ほど乗車した津軽線が、その後に開通する予定の津軽海峡線の一部として活用されることが決まっていたのと違い、第一次特定地方交通線、つまり、間もなく廃止されることが決定していました。
後日談ですが、国鉄黒石線はその後、地元の弘南鉄道に譲渡され、しばらくは弘南鉄道色に塗り替えられたキハが走っていましたが、現在は廃止されています。黒石には、国鉄黒石線が存在した時から、同じ弘南鉄道の電車が弘前駅から乗り入れていたことも、逆に廃止を促したのかもしれません。
黒石駅17:02着。乗車時間10分。これでも1線区踏破です。
乗車列車の車内補充券 1981年3月31日 見にくいですが、左の列、下から2番目の「120」の右側にパンチ穴があります。
17:19発の折り返し138Dで川部駅に17:29着。17:32発の東能代行き628列車にすぐに乗り換え、弘前駅には17:41に帰り着きました。
祖父母宅に戻ると、待っていた祖母が祖父に、
「どうでした?」
と聞くと、祖父は一言、
「いやー、つまらなかった!」
と言ったのを、はっきりと覚えています。
せっかく三厩まで行ったのに竜飛崎へも行かず、1日中ただ列車に乗って戻ってくるという「旅」が、祖父には全く理解できなかったようでした。
その祖父母ともすでに他界、今でも苦笑と共に思い出します。
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