クルーズ中のディナーは最初にテーブル番号を貰い、
航海中同じテーブル、メンバーで過ごします。
よっぽど相性の悪い人がいる場合は「チェンジ」となりますが、
基本、毎晩同じメンツで2時間ほどの夕食を共にします。
その日にしたこと、明日の予定、加えて船内のゴシップなどなど、
意外に話す内容は尽きません。
私は前回のクルーズでキースという爺さんと
その奥さんにうんざりさせられたので、
今回もし、この夫婦が乗っていて、万が一また同じテーブルになった場合、
速攻変更してもらおうと最初の夜ドキドキしていました。
テーブルには私の天敵キースはおらず、
初めて会うイギリス人カップルとアメリカ人カップルがいました。
イギリス人カップルの方は、
引退したinspectorのJとその奥さんのP。
アガサ・クリスティーファンの私としては
Inspector=警部=ジャップ警部の図式で正直「わーい」と舞い上がったのですが、
Jは、職業柄か皆が自分の話に注目して当たり前と思っていて、
なのに話が退屈で困りました。
(これもある意味ジャップ警部ぽいのですが)
でも奥さんのPがいい意味でおしゃべりなオバちゃんだったので助かりました。
アメリカ人カップルは3年前に引退した大学教授Fとその奥さんCでした。
Fは以前、九州大学と西南学院で1年、客員教授として教えていた、
お濠公園の近くに家族で住んでた、
と言われ子供の頃福岡の小郡に住んでいた私は一気に親近感を覚えました。
部屋に戻ってから改めてスーさんに
「あのFはなんの教授だったの?」
と聞くと、
「英文学。ハーバード大学の」
その部分をすっかり聞き逃していたから驚いたものの、
そういうクレバーな人とテーブルを共に出来るのもクルーズの醍醐味と思い、
やや開き直った態度で毎晩ディナーに挑みましが、
Fは唐突に、
「日本にはエタ・ヒニンあるよね?」
「は?」
「部落のこと」
とか、
「日本には、『ラブホテル』あるよね?」
「は?」
とか、テーブルで私しか分からない話題を振るので困りました。
スーさんが食い道楽なのはテーブルにすぐに知れ渡れ、
分からないメニューがあると皆スーさんに聞くようになったのですが、
皆が下船するNYに明日着くとなった晩、
FがスーさんにNYお勧めのレストランを聞きました。
FとC夫妻はマンハッタン在住の友人宅に数日滞在することになっていて、
美味しいレストランを探していました。
スーさんは
「NYで今一番お勧めのレストランはここ」
とレストランの詳細を渡しました。
私たちは既にそこのレストランを予約していたので、
イギリスに戻る日の昼にそのレストランを訪れたのですが、
そこにFとCとマンハッタン在住であろう友人夫妻が既にランチを取っていました。
なんたる偶然!
スーさん早速テーブルに挨拶に上がり、偶然の再会に驚いたのですが、
F夫妻のマンハッタンの友人に
「このレストランは私たちの娘も勧めていまして。良い機会でした」
Fも楽しんでくれたみたいで、
「スティーブン、いいところ教えてくれてありがとう」
下船してから風邪を引いたらしく、鼻声でお礼を言っていました。
クルーズは世界各地の人と会う機会を与えてくれますが、
ひいては再会が難しかったりします。
だからなおさら嬉しい偶然でした。