ロンドンの高級エリア、メイフェアにあるミシュランレストランに行ってきた。

お洒落して家を出たはいいが、歩き疲れて足は痛いし、曇天で雨もパラパラ。
店に到着した時の私は正直不機嫌だった。

そんなことは露とも知らない店のスタッフはにこやかに我々を迎え、スムーズな所作でテーブルまで連れて行ってくれた。

「こちら、キッチンの様子が丸見えの特等席でございます!」

誇らしげに通してくれたテーブルは、まさしく台所前。
調理&盛り付け&皿洗いまでが見渡せる。

「うわあ、すごいなこれは。ゴードン・ラムジーはどこだ(笑)」

たちまちスーさんは上機嫌に。

反対に不機嫌で小姑魂にくすぶっていた私は、目ざとく台所の一点を指差す。

「なんなのあれは」

お湯が張られた鍋らしきものから引き上げられた、パウチに入った肉。
それを焼き担当のシェフがはさみでパウチを切り開き、煙が立ち上るフライパンに投入していた。

レ、レトルト?
ミシュランレストランが、レトルト料理を提供ですか?

「違うよ、あれはウォーター・バース(water bath)といって、ここ数年すごく流行っているんだ。
ああやってパウチで密封して、お湯の中でじっくり温めることで、素材の持ち味が最後まで保たれるんだ」

「それってほとんどレトルト食品の概念と同じじゃん」

「違うよ、素材の持ち味が」

「持ち味大事だったら、蒸せばいい。出た汁も一緒に使えばいい。それを、あんな、パウチで密閉、ってああ、また密閉してる、パウチっこか、ここはパウチっこ工場ですか」

「うるさいなあ、もう。メニュー選びに集中してよ」

小姑の目が光っているのも介さず、シェフはパウチに豚肉、オリーブオイル、ハーブを入れ、パウチっこしたのちお湯に投入する、を繰り返していた。

一方で、盛り付けシェフがアスパラを野菜担当に「ダメ、これはお客に出せない」といった顔で首を振りつつ突き返す、といった『プロの現場』も垣間見えたり、

あー、この人こうやって味見し続けた結果あんなんなっちゃった体型のシェフもいたり。

そういう合間も件のシェフはパウチっこ作業に大忙しだ。

なーんか気がそがれるんだよな、パウチ。
素材の持ち味が最大限に保てるのはいいとして、あの機械に頼る作業がどうしても「手抜き」に見えちゃうのだ。

多分これがキッチンなどまるで見えないテーブルで
「このwater bathの豚肉とは?」
「ウォーターバースでございますか?こちらは(以下略)」
わざわざ特別な処理と時間を掛けたという印象だけなら、きっと心からおいしーーー!ってなると思うのに。

折角の特等席に通してもらってなんだけど、あのレストランに限ってはキッチンは見たくなかった。

料理はもちろん至極美味なものでしたけど。
ラビオリ絶品!


しかしメイフェア界隈&そこの到るまでの居住区はやっぱりすごい
路駐ベントレーに遭遇しっぱなし

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-英国発- 週刊!女将タイムス
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