(一部お見苦しい表現がありますこと、予めご了承下さい)

女将はその時、皿を洗っていました。

背後では牛のレバーが煮えていて、そろそろ吹きこぼれそう。
匂いに興奮した猫達が、足元を駆け回ってもいました。

皿にも鍋にも猫にも気をつけなきゃで、女将ちょっと落ち着かない気分だった。

そこへ1本の電話。

慌てて手を拭き、受話器を取り上げる女将。

「ハロー」
「・・・・・・・(プツッ)ツーツーツー」
「ちっ」

再び皿を洗い始める女将。
鍋では牛のレバーが煮えていて、そろそろ吹きこぼれそう。
匂いに興奮した猫達が、足元を駆け回ってもいた。

そこへまた電話が。

「ハロー」
「・・・・・・・・・(ガチャリ)ツーツーツー」
「だからなんなのっ」

再び皿を洗い始める女将。
鍋では牛のレバーが煮えて、そろそろ吹きこぼれそう。
匂いに興奮した猫達が、足元を駆け回ってもいた。

そこへまたまた電話が。

「ハロー」
「・・・・・・・・・(ガチャリ)ツーツーツー」
「だから一体なんなんだよっ」

3回やられた時点で、女将は結構ムカついていた。

でも、セールス電話(しかもテープに録音した声を垂れ流してる、横着の極みみたいなヤツ)に閉口することはしょっちゅうだけど、無言電話ってのはイギリスに滞在して初めてのことでした。

こういう根暗で粘着系の嫌がらせって、日本独自な感じが女将にはするんです。

例えばイギリス人だと、車の窓割ったり、電車の車体に下手クソな絵描いたり、
サッカー観戦しながらダミ声で熱唱するとか、
どっちかっていうと外に向かってストレスを解消する傾向があるんじゃないかと、
女将は勝手にイメージしている。

ちょっと気持ち悪かったけど、気を取り直して再び皿洗いを始めました。

鍋では牛のレバー・・・(以下略)
匂いに興奮した猫達・・・・(以下略)

そこへまたまた電話が。これで4度目。
賞味2分間に4回!

「もしもしっ」

今度は日本語で応対しました。

「・・・・・・・・・・・(ガチャ) ツーツーツー」

「うがぁーーー!!だから一体なんなんだよ!!!」

檻の中のゴリラのように台所をグルグル回る女将。

とりあえず皿洗いを終わらせよう。
少し冷静にならなくちゃ。

鍋では牛のレバー・・・(以下略)
匂いに興奮した猫達・・・・(以下略)

そこへまたまたまたまた電話のベル。

これで5回目。

自分、ここまで良く耐えた。

女将の大砲に玉込めよーい!一番でかくてどびきりのを!

ラジャー!!

隊長、充填完了しました!!

よし、それでは点火!!!

3


2


1

「だからさっきからしつこいんだよ!二度と掛けてくんな!うがあああああっ!!」


その時の女将の顔はまさしくゴリラだったそうな。(猫談)
電話線を引き抜き、肩で息する女将は、ますますゴリラだったそうな。(同上)
背後では鍋からレバーが吹きこぼれていました。

一体全体、誰なんだ?!

夏休みに家に閉じこもってるティーンか?
でもやっぱり想像つかない。
本当イギリスっぽくないんだよね。
もしうちに恨みを持つ人間がいるなら、庭に牛糞放り投げられるほうがしっくりくる。

それとは別にちょっと思ったのはスーさんのお母さん、つまりお姑さん。
姑との関係は至って良好なんで、ご心配なく。
そうじゃなく、彼女からの電話たまに声が聞こえないってスーさんが前にこぼしてたのを思い出しまして。

一瞬ギョッとなったけど、今船旅に出掛けてるからセーフ。

皿を叩きつけるように洗って、猫蹴散らして、レバーを切り刻み終わる頃にやっと落ち着くことができました。

その頃、スーさんが帰宅。

「おかえりー」
「・・・・・・・・・・」
「(?)」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「(!)」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「ね、ねえ、もしかしてさっき電話した?」
「(コクリ)」
「(やっべー)」
「電話して奥さんに罵声浴びせられた。何言ってるのかは分からなかったけど、あれは罵声だった」

犯人ここに現れり。

「声全然聞こえなかったよ」
「僕はしゃべってたよ。何度掛けても通じてないみたいだし、電話は勝手に切れちゃうし」
「聞こえてなきゃ無言電話だしねえ。それを5回連続やられたら誰だって、スーさんだってキレるでしょ」
「まーね」

無言電話に悩まされている貴方、
犯人はすぐ近くのあの人かもしれません。


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順位が上がると、女将が台所で喜びの舞を舞います。
 -英国発- 週刊!女将タイムス