その時女将は夢を見ていました。大好きな歌手ダフィーちゃんシティーガールのイギリス田舎生活 と、なぜかパブを経営している女将は、注文をさばくのにてんてこ舞い。

「ダフィーちゃん、紅茶を3人前、あとソルティードックとサイダー。とりあえず紅茶急いで!!

そんなパニック女将とダフィーちゃんの頭上を、突如低いうなり声が響き渡りました。

ウウウウウウウウウウ~~

女将の夢はそこで終了。というのもそのうなり声で目が覚めてしまったのです。

「スーさん、今の聞いた?」
「ううううーーーん、そういえば」
「ちょっと、ヤム(猫)!ヤムがいない!」

普段ベッドで一緒に寝ているヤムの姿が見えません。もしや夜盗に向けてのヤムの威嚇?スーさんを蹴飛ばしてベッドから起き出させ、ヤムを探しに行ってもらいました。いつも素っ裸で寝るスーさん。そんな無防備な格好で果たして盗賊一味とやり合えるのか、そんな不安がチラリとかすめましたが、

「ニャーー♪」

裸族のスーさんが戻ってきました。

「家の中は別に異常ないよ。ヤムも踊り場で寝てたし、あれはきっとキツネキツネさんだな」
「(ケツネ・・・・・・・。)」

そんなもんが夜中に徘徊する土地。今更ながらえらいところに嫁入りしたもんだ。

夜中に徘徊する野生動物と聞いて思い出すのが、ハネムーンで行ったケニアのサファリです。
女将達が滞在したキャンプは、テントのすぐ下を川が流れていて、いつもカバの一群が昼寝をしていました。カバ好きの女将とスーさんは大喜び。そんな私たちにスタッフが注意を促しました。

「カバは夜行性なので、夜になると川岸を上がってテントのすぐ近くまでやってきます。彼らは縄張り意識が非常に強いので、夜テントから出るのは非常に危険です。出る時は必ずスタッフに声を掛けること」

あれは、バルーン(気球)トリップ前夜。就寝前にスタッフがマサイ族の衣装に身を包んだ男性を連れて女将達のテントを訪れました。

「こちらはガードマンのフレディ(仮名)です。明日のバルーントリップの出発は夜明け前の非常に早い時間。カバがウロウロしているやもしれませんので、今夜彼がこのテントを寝ずに番をします。起きる時間になったら彼が起こしに伺いますから」

『寝ずの番』という言葉に一気に緊張感を高めた女将。
確かにフレディは、長くて鋭い先端の槍を手にしている。

「すごいヤリですねえ。ちなみに今までに仕留めた中で一番ビッグな相手は?」
「ライオンらいおんデス」
「まさかそのヤリ一本でってことはないよね」
「ソノマサカデス」

誇らしげに答えるフレディ。こりゃ頼りになりそうだ。

「寝ずの番、しっかりお頼み申し上げます。それでは明朝」

数時間後。ホトホトとテントを叩く音がしました。

「オハヨウゴザイマス。コーヒーヲオモチシマシタ」
「おはようフレディー。寝ずの番お疲れ様でした」
「・・・・・・・・・・・・・・・・。」
「朝方は冷えるから、そのコスチュームじゃ寒いんじゃないの?ねえフレ・・・・・・あんた誰???
「私はスタッフのジョン(仮名)です。女将さんおはようございます」
「ちょっと、フレディーは?寝ずの番のフレディーはどこよ?」
「さあ、、、、。多分、家に帰ったんじゃないかと」
「はあぁ?」

確か、
「ここに座って一晩中火を絶やさないようにします」
と言ってなかった?焚き火に視線を向けると、炎どころか煙も無し。全くもって冷え冷えしている。
何が寝ずの番だよ。あの後とっとと帰りやがったな。

まあ、予定通りに起きれたんだし良しとしようじゃないかと無理に自分を納得して、バルーントリップの集合場所である某ホテルに着きました。ロビーでお茶をすする女将達の横に、一組のイギリス人のカップルが。自然と話題はそれぞれが泊まるキャンプのことになりました。

「要するに一晩中、ガード無しで寝てたってことでしょ。本当無事でよかった」

「いやあ、僕たちも似たような目に会いましたよ。『寝ずの番』をして起こしに来ますって言葉を鵜呑みにして僕たちグーグー。起きたらとっくに出発時間を過ぎている。クレームしようとキャンプ事務所まで走っていったら

ガードマンどころか、スタッフ一同、床に転がって爆睡中!

あれ以来、いくら起こしに来るって言われても絶対目覚まし時計をかけるようにしてるんだ」

マサイ族よ、あなた達にとって寝ずの番とは?

一度聞いてみたいものであります。

        舞妓はん本日もご来店ありがとうございました舞妓はん
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