昨日一日降り続いた雨もようやく止み、今日は朝から快晴だ。
朝ごはんを大急ぎで食べた我が家の猫、ヤムとチャは、トイレの砂掛けもそこそこに台所のドアから元気に野原へ駆け出していった。「いってきまーす!」
そんな彼らを見送りながら私はホッと胸を撫で下ろす。
雨が降らない限り、彼らの一日のスケジュールは我々人間と同じ。
彼らも立派な勤め人なのである。勤務地は裏庭から続く広大な牧草地。主な任務はパトロールだ。
キジのカップルに挨拶をし、草をはむ鹿の尻をかぎ、土を掘り起こしてモグラを叩き起こす。時折草の間を走り回る小ネズミを交通整理。(殺傷とも言う)
我が家の庭先にある水飲みボウルがパブと化し、猫会議が開催される日もある。
怪しい鼻毛オヤジ(庭師のケン)が来た時は柵の上からの監視も怠らない。
日が暮れお腹が空き出した頃、マミー(私。日本人)とスーさんが帰ってくる。
夕飯を食べると途端にまぶたが重くなり、ソファーでテレビを観つつ入浴、そしてうたた寝。夜もふけた頃スーさんにベッドまで運んでもらって朝までぐっすり夢の中。
これが雨であった場合どうなるか。
当然ながら一日中家の中で留守番だ。
辺りが暗くなり始めた頃、車の停まる音がしてスーさんが家のドアを開ける。
「それ!今がチャンス!」とドアの隙間から外に飛び出すが生憎の大雨。濡れた足をマットで拭き、肩を落として家に戻る。楽しみはご飯だけ。お腹がいっぱいになっても昼間に惰眠をむさぼったため目はギンギンに冴えている。
そうなると大変なんである。このマミー(日本人)が。
彼らは揃ってストーカーとなりマミーを付け回す。
食事を作ってても ニャーニャーニャー
皿を洗っても ニャーニャーニャー
トイレ行っても ニャーニャーニャー
洗濯物たたんだらダイビング
それらに飽きると
「おい、こらてめえ。今肩ぶつけただろ」
「インネンつけてんじゃねえよ。お前が先にぶつかってきたんじゃい」
兄弟ゲンカが勃発する。
「あんたたちなにやってんの!やーめーなさい。やめなさいって言ってるでしょ!意味ないから!意味ないですから!
マミーの言うこと聞いてちょうだーーーーい!」
マミーのソプラノボイスがむなしく響く。
そして夜も更け無理やりベッドへ。が、当然寝るはずが無い。
ベッドの上を二匹の猫が大行進だ。
その際寝ているマミーの心臓の上が通り道となる。
「明日天気になぁれ」
マミーは祈りながら眠りにつく