イースターホリデー、我が家は毎年ヨークシャーの羊牧場で過ごす。今年で3度目を迎えた。

 

旅行の朝はまず猫の餌が変わる。いつもなら朝はドライフード、夜は猫缶なのだが留守番の時は朝が猫缶になる。「君たちすまねえ。こらえてくれ」というメッセージが込められているわけである。だがそんな見え透いた手口を許す彼らではない。出掛ける時も二階から我々を恨めしそうに見ているだけ。「行ってくるよ」と声をかけてもヤムは完全無視。ボヤキ声を上げながら寝室に向かった。

 

ところでヨークシャーは連日雪であった。

 

例年より早めのイースターということもあり、ある程度の寒さは予想していたものの激寒である。

ちなみに私、イギリスに来てからすっかり寒さに強くなり10月の東京では半袖で過ごす。

「頼むから何か着てくれ。見てて寒い」と友人に懇願されても無視。暑いもんは暑い。

その私が寒いというのだから本当に寒い。

 

いつもなら牧草地に溢れる子羊達もまだお母さん羊のおなかの中である。一匹だけ生まれたそうだが、彼もきっと産声を上げた直後に寒さに後悔、子宮に戻ろうとしたのではないだろうか。

 

実は今回の訪問のためにワザワザ羊が一面にプリントされたフリースジャケットをチャリティーショップで見つけて準備していた私。来年に持ち越しになってしまった。羊一面、からも分かるようにかなりダサいのである、このフリース。羊と写真撮ったらさっさとチャリティーショップに戻そうと思っていたのに。なかなか予定通りにいかないものだ。

 

ところで羊って日本人にとっての「牧歌的」なイメージの象徴と言ってよかろう。

事実、日本から友人が来た時のシャッター回数が断然多いのが羊である。

 

ほら、ふわふわの羊が緑の牧草に散らばってるよ。

ほーんと、まるでちっちゃい雲が空から降りてきたみたいだね

何匹いるんだろ。いーち、にーい、さーん、

おいおい、そうやって眠ったりしないでくれよ

何言ってんの、もー

 

夢を壊すようで申し訳ないが実際の羊はかなり汚い。

白?とんでもない。茶。毛先なんて泥でモロモロだ。

もし白だったら雪に隠れて見えないはずである。いやいやバッチリ見えてます。

 

妊娠しているせいもあり、彼女たちの後姿はかなりセクシー。キューバあたりの女の人のような豊満なおしり。ほそい足首。ハイヒールのような華奢な蹄。

しかしボロボロの羊毛のお陰でホームレス色がどうしても加わってしまう。

 

コツコツ蹄を鳴らしスポットライトを浴びるシャンソン羊。5年前から伸ばした自前の羊毛は床に届くまでになった。

息子は父親の顔を知りません。彼の夢は大リーガー。いっぱい稼いで私を楽にしたいって。でもあのこの命もあとわずかなの。

それでは歌います。ミュージカルキャッツから『メモリー』

 

メモリーがシャンソンかという疑問はおいといて、そう、羊とキャッツのメモリー猫が私の中ではどうしても重なってしまう。でも実際の彼女たち(羊)はただベーベーと鳴くだけである。今日も明日もあさっても。

 

そうそう羊ってベーベーだった。

こうして私は1年ぶりに羊達との再会を果たした。