水仙とムスカリが咲き誇る季節がやってきた。水仙の黄色にムスカリの青、この色のコントラストを見ると春の訪れを実感する。そして今週金曜からイースターホリデーが始まる。


イースターホリデー。それはレジャー。
イースターホリデー。それは家族サービス
イースターホリデー。それはキャラバンが出現する合図


キャラバン。別名キャンピングカー。それ自体がキャンプ仕様のものから自家用車に牽引されるタイプまでさまざまだ。イギリス人はキャンプが大好き。 あのかわいい愛車に荷物を積み込み、さあキャンプ場へ出かけよう!イースターを皮切りに全国に散らばるキャンプ場はキャンパー達で溢れかえる。


さて、私にとってのこのキャラバン、苦々しい存在以外の何者でもない。敵視しているといってもいい。

キャラバンは、のろい。坂道なぞヨチヨチ歩き。複数車線の広い道路なら問題はない。追い越し車線を使ってさようなら。目の端を通り過ぎた一瞬の幻だ。
困るのは田舎道の一車線である。いい気分でドライブしていると突然目の前に出現するスローな一団。
「ち、きゃつだな。」苦々しい気持ちでスピードを落とすことに。

これはご老人の運転も同様。信じられない低速度。毎日が日曜の彼らに急ぐ理由などあるはずもない。
「家でミスマープルでも観てればいいものを!」
ストレス度マックス。追い越すついでに一瞥与えてやろうにも見えるのは二本の腕のみ。本体はシートの奥底に沈みこんでいるのが常だ。

その日も田舎道でスローな集団に遭遇した。遥か彼方に見える先頭車。キャラバンでもトラックでも農業カーでもない。そうなるとそう、シニアである。時折反対車線に乗り出して追い越す車も何台かいる。しかし焼け石に水。追い越す車より追いつく車の数の方が遥かに多い。じたばたしてもしょうがない。二車線を待つのみだ。

長い時間が終わった。辛抱の期間もそろそろおしまい。やっと二車線が見えてきた。我々よりはるか以前の集団に取り残された大きなトラックがマイペースで二車線の左側を走っている。

「やれやれ、やっとおさらばできるぜ」

先頭車は左車線に体を寄せ、必ずや我々に道を明け渡すであろう。後続車は皆そう思った。
しかし、人生の大先輩の判断は非常に奥が深い。

彼(彼女)は我々の期待を見事に裏切り、思いがけない行動にでた。

ゆるやかなカーブを作って右車線を取る先頭車。なんとトラックを追い越しにかかったのだ。
その場にいた全ての人間が凍りつく。無理です!出来るはずがない!!!あの時私達は一つになった。
恐らく後方車がパッシングでもしたのだろう。追い越しを諦め彼(彼女)はトラックの後ろについた。シブシブ、といった感じに見えるのは気のせいだろうか

元気良く飛び出す後続車達。アクセルを踏み込めるドライブがこんなに爽快なものとは。
そしてその元凶を一瞥すると、ニョッキリ突き出る二本の腕であった。

イースターは毎年ヨークシャーの羊牧場で4日間を過ごすことにしている。
約6時間のロングドライブ。一体何台の車を「視」殺するのだろう。いささか気が重い