松本清張のゼロの焦点を1日で読みました。
描写に時代を感じます。
断層のような雲の重なりが横にのびていて、その薄い隙間をやはり雲の裏側に沈んでゆく陽の光線が明るい筋にしていた。それも、しだいに白さを消しつつあった。
雲は、諏訪湖より遥かに広い面積とくろずんだ色で湖面を圧していた。

戦後13年、昭和33年という時代は、今とはかなり違います。
写真を見るためには、わざわざその場所に行く必要があり、遠方への電話は交換手が取り次ぎます。
砂の器もそうでしたが、話の展開には無理がある感じがしましたが、当時の雰囲気が感じられます。
主人公の旦那さんの同僚の本多という人もいい人で、今の職場とは違うかもと思いました。
今は、職場の人と検索すると、関わりたくないとか、仲良くしたくないとか出てくるし、親しげに近づいてくる人に色々話したら、陰で悪口を言われていたとか、ハラスメントもあるしもっと複雑になったと思います。
1960年昭和35年に映画化されているようなのですが、このときの役者さんたちは、ほとんど亡くなってしまっています。加藤壽(かとうよし)も登場していました。
舞台が能登半島で、金沢の兼六園が出てきました。日本海海の激しさや断崖の多い海岸沿いなどがよく描かれていて、謎がもり上がっていたと思います。