スパイの仮面

　何時ものように１時前に店を開け、ちょっと落ち着いていたところ、店の前に一台の車が停まりました。
黒塗りの日産ティアナです。その車から背の高い骨格の良い男二人が降りてこちらにやって来ました。
その男達が店の戸を開けるやいなや、「北警察署のものです。」と言って警察手帳を見せてきました。
その時、私の脳裏には「あれ、何かやらかしたっけ？」と色々なことがグルグルとよぎりましたが、思い当たりすぎてよく分かりませんでした。そう、この時点で私は何らかのお叱りを受ける覚悟だったのです。
そういう私の思いをよそに刑事は話し続けました。
「９月○日に中山でコンビ二強盗がありまして、その強盗が・・・」
エー、コンビ二強盗にされてんの！？
「スパイの十字架が付いた頭巾を被って押し入ったもので、」
は？すぱいのずきん？
「ここがスパイの取扱店だと調べてきました。」
スパイってもしかしてＳＰＹ！そうか、それで疑われてんのか。
「それで犯人が被っていたのが、ＳＰＹのヘルメットを入れる袋のようなものだったんです。」
と言って、コンビニの防犯カメラの映像を見せられました。
「ＳＰＹはヘルメットを作ってないので、ヘルメットを入れる袋なんかないと思います。カタログが有るので良かったら持って行ってください。」
と言いながら、ＳＰＹのカタログを刑事に渡しました。どうやら彼等は私のことを疑ってないようです。私はまるでドラマのようなこの展開が面白くなってきました。
本当にそんな些細な情報（私の私見では、スパイの十字マークではなく、別な何かだと思う）を辿ってうちみたいな所にすら聞き込みに来るんだと、警察の捜査が本気であることを感じ税金を払っても良いかなって気分になりました。
あとは、無事に犯人が捕まることを期待しております。