2011年 ベスト10冊 | ほんのにちようび

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心に残った本のあらすじと感想をつづります。

(時に映画、マンガ、音楽などについても)

去年はちょっと読書量が少なめ。全体的に不作の年でした。

総読書数:166冊


[2011年のベスト10冊]

空白の5マイル/角幡 唯介
 ・・・あらゆる秘境が探検し尽されたこの現代において、どの探検家も足を踏み入れたことのない5マイルの秘境がチベットにある…。そんな秘境に大学の探検部に所属する作者が挑戦した記録がこの本。私も旅は好きな方だけど、こんな命をかけた旅はちょっとごめんだ。でも、そう言いつつも、後ろを振り返らず無謀な挑戦を繰り返す作者がどこかうらやましくもあり、謎が解明されていく展開から目が離せない。


デフヴォイス/丸山 正樹
 ・・・これまでなかなかスポットが当たることがなかった聾唖者の生活を描いた作品。家族に聾唖者がいたせいで、“ネイティブ”に近い形で手話を操ることができる主人公は、ある日、手話通訳士として法廷通訳を頼まれることになる。大きな事件がなくても、ディテールのリアルさと巧みな心理描写で十分楽しめるのだけど、途中から一気に話が展開してにわかにミステリーの様相を帯びてくる。と思ったら、松本清張賞最終候補作だったのね。これがデビュー作とのことで、2作目が今から楽しみ。もし2作目が本作と同等の水準だったら、ポスト藤原伊織も夢ではないと思う(個人的にはミステリーじゃない作品を書いてほしいけど)。


ヤマノミ/国分 拓
 ・・・NHKの報道局ディレクターとして、アマゾンのヤマノミ族に潜入取材をした作者の記録。同名でNHKのドキュメンタリーとしても放映されたようだ。私たちの常識ではちょっと想像できない行為が、彼らの生活の中ではごく普通に行われている。その空間には神が存在している、と思わせる。別れの際に、カメラマンが歌った「島唄」(THE BOOMのね)をヤマノミの人々が繰り返し聞きたがった、というくだりが印象的。「辺境にこそ文化の本質が残る、という言葉を思い出した」という作者のことばが心に残った。そういえば、昔ブラジルの日本人村に行ったときのことを話していた先輩が「彼らは、僕らがもう使わなくなった美しい日本語を話していたんだよ」と言っていたなあ。


困ってるひと/大野 更紗
 ・・・20代半ば、難民問題に取り組むアクティブな大学院生の作者が、ある日突然原因不明の難病に。その難病がこれまた超レアな難病で、とつぜんおしりから(穴ではなく臀部から)大量の液体が流出したりする。そんな難病ライフを、ユーモアを交えながら記録する作者はただ者ではない。きっと極限まで行って、ちょっと達観したんだろうなあ。ちなみにこの作者の方、知人の大学の先輩だというから世間は狭い。


正義のミカタ/本田 孝好
 ・・・「Missing」が面白くて注目し、以後新作が出るたびにがっかりさせられてきた(←ごめんなさい)本田孝好。この正義のミカタは久々に振り切れてて、読んでてわくわくした。いじめられっこの主人公が大学で「正義の味方研究部」に入部し、少しずつ変わっていく…のだけど、最後がちょっと…。ラストが違えばもっと評価が高かったのにちょっと残念だけど、それでも読む価値あり!


望郷の道/北方 謙三
 ・・・人生相談の回答でことあるごとに「ソープへ行け!」とのたまってきた北方謙三先生。そのネタがあまりに有名すぎて、今まで著作を読む気になれなかったのだけど、読んでみたらびっくりするほど面白かった。今まであなどっていてごめんなさい。賭場を仕切る女カリスマと、船頭として名をはせる男カリスマが結ばれるも、とある事件で故郷を追われ、台湾で裸一貫から菓子屋を創業。その波乱万丈ぶりたるや、大河ドラマ並みの読み応え。また主人公夫婦のキャラクターがとても魅力的で、惹き込まれる。


信玄の軍配者/富樫 倫太郎
 ・・・トガリンの軍配者シリーズ第2弾。足利学校で学んだ3人の軍師が、北条早雲、武田信玄、上杉謙信のもとでそれぞれ活躍する様子を描いている。この3人の、べたべたしていないけどあつい友情が泣かせるんです。3作目の「謙信の軍配者」ももう出てるから早く読まなくちゃ。


コトリトマラズ/栗田 由起
 ・・・前から面白い話を書くなあ、と思っていた栗田さんの、今回の作品は私の嫌いな不倫もの。しかも大して大きな出来事は起こらない。なのにこんなに読ませるなんて!淡々としている筆致なのに、細かい心理描写に都度共感させられる。


サラマンダー殲滅/梶尾 真治
 ・・・映画にもなった「黄泉がえり」の作者の初期のころの作品らしい。地球外の惑星が舞台のSFもの、という少し現実離れした内容も、海外滞在時に読んだせいか難無く入っていけた。主人公はテロで夫と子どもを亡くし、ショックのあまり意識を失ったままの美しい未亡人、静香。父親が劇薬を使って彼女の辛い記憶を消し、意識をとり戻させる。夏目郁楠という軍人が彼女に思いを寄せる。こいつがまた新しいタイプの超自己中ヤローなのだが、面白くて目が離せない。ところどころ現れるちょっと突飛な設定も面白く、ラストはありがちでない感動をもたらしてくれる。


ベイジン/真山 仁
 ・・・関係者が事前にこの本を読んでいたら、福島原発の事故を防ぐことができたのでは? こんなリアルな原発小説が、事故の2年も前に出ていたなんて! 日本企業の技術者が、中国の現地スタッフと協力して原発を建設するのだけど、日本企業の思惑、政治家の思惑、国家の思惑が絡まり合い、不完全な状態で操業を開始せざるを得なくなり…。その後の原発の制御不能状態は、まるで震災後のニュースを見ているかのようだ。


[番外]

ふがいない僕は空を見た/窪 美澄
 ・・・男子高校生の「性」と「生」。最初のエロい部分を変えれば違う賞も狙えたのでは?と思うけど、あの部分があるからこその幅の広さや懐の深さも感じられるので一概にない方がいいとも言えないか。2作目をぜひ読んでみたいと思えたので番外に。