- 伊坂 幸太郎
- 砂漠
- 実業之日本社 ★★☆
- サン=テグジュペリ, 堀口 大学
- 人間の土地
- 評価不能
すでに人気作家としての位置を確立した感のある伊坂幸太郎。その彼が青春群像ものを書いたというので、読んでみた。
彼の出身である東北大学をモデルにしたであろう、5人(男3人、女2人)の大学生活。そのなかの西嶋という人物はサン=テグジュペリに強い影響を受けているらしく、「人間であることということは、自分には関係がないと思われるような不幸な出来事に忸怩たることだ」というようなことを、新歓コンパで生真面目な顔をして言い出す。
主人公は物事に必要以上深く介入せず、自分の周りを俯瞰してみている(気になっている)、現代っ子っぽいさめた人物。それに、前述した西嶋という学生運動でも起こしそうな熱血漢と、鳥井という絵に描いたような軽薄男&金持ちのボンボンとがつるんでいる。
あとはご想像通り、恋愛話があったり、ちょっとした冒険とそれによって失うものがあったりするのだが、最後に4人は卒業式を迎え、校長先生の「人間にとって最大の贅沢とは、人間関係における贅沢である」というサン=デグジュペリの引用による送辞によって幕を閉じる。
読みやすいし、悪くはないけど、(おそらく作者自身も影響を受けたのであろう)サン=テグジュペリの思想が、未消化のまま単純に提示されているだけな気がして、もう少しアレンジ加えてほしいなと思ったのも事実。
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上の校長先生の送辞の引用元である「人間の土地」は知人に薦められて、1年ほど前に読んだことがある。
まだ飛行機が安全だった時代、郵便物を届けるために長距離飛行をしたサン=デグジュペリの実話にもとづく、物語のような、随筆のような、はたまた長い長い詩のような本だ。かの宮崎駿も感銘を受けた本らしく、
カバーのイラストとあとがきを書いている。
この本を読んだとき、私はここに感想を書こうと思ったが、どうしても書けなかった。
当時の私では、内容の深さが理解しきれていないと思ったからだ。よく、昔読んだ本を再読したときに、「この本はこんなことを描いていたのか」と新しい発見に目からウロコが落ちることがあるように、私がもう少し精神的に成熟してから読んだら、きっとこの本のもう少し深いところまで到達できる(逆に言うと今の私では到達できない)のではないかと感じた。そして今もまだ到達できていない。
(たぶん映画もそうだけど)、本って、読んだときの感情や、精神的成熟度や、読書量によって、読み込める深さが違う。それが面白い本の面白いところだし、名著といわれる本ほど、読むたびに違う表情を見せる。
この「人間の土地」で、特に私の心に残ったのは、この1文。
たとえ、どんなにそれが小さかろうと、ぼくらが、自分の役割を認識したとき、はじめてぼくらは、幸福になりうる、そのときはじめて、ぼくらは平和に生き、平和に死ぬことができる、なぜかというに、生命に意味を与えるものは、また死にも意味を与えるはずだから。
BGM:1000のバイオリン/THE BLUE HEARTS