- 住井 すゑ, 永 六輔
- 人間宣言―死があればこそ生が輝く
- 光文社 ★★★★
同和問題に、なぜだか昔からとても興味があった。島崎藤村の「破戒」や、住井すゑの「橋のない川」、森達也の「放送禁止歌」、「いのちの食べかた 」、そして「竹田の子守唄」なんかを読んだのも、もっと当時の実情を知りたいと思ったからだし、実際に昔被差別部落だった地区に行ってみたこともある。そこは今では団地になっていて、当時の様子は見る影もなかった。
同和問題を描いた作品のなかでも、特に住井すゑの「橋のない川」は傑作だと思っているのだけど、この「人間宣言」を読んで、作品だけではなく、作者本人も魅力的な人なんだなあと改めて実感した。彼女は裕福な家に生まれ(ちなみに彼女自身は被差別部落の出身ではない)、成績優秀で講談社に入社したものの、「男は月給だが、生理があって休む女は日給だ」と言われたことに憤慨し、退社して作家に転身する。曲がったことがきらいな彼女の発言は強い信念で貫かれていて、読んでいて気持ちがいい。
この「人間宣言」では、彼女らは自分たちの思い出、交友関係などを通して人生を語っている。豊富な人生経験をもった人の雑談がもうそれだけで面白いように、彼女たちの対談もくだらないこと、個人的なことを交えながら生きるということを深く感じさせる内容になっている。もし、住井すゑが生きていたら、いつか一緒に仕事をしてみたかったなあ。
私はもともと頭もよくないし、知的に見せるために知識を蓄えようという野心(笑)はほとんどないが、まわりの大切な人が困っていたり、落ち込んでいたりするときに、少しでも心が軽くなるようなことが言える人間になりたいと思う。私自身の体験からはたいしたことも言えないので、それはたとえば何かからの引用だったりしてもいい。そのために本を読んでいる、っていう部分が確実にある。
余談だけど、ずっと一緒に過ごしてきた飼い猫が4月に死んだ。覚悟はしていたので、思ったほどのショックはなかった。ただ、寝るときには必ず私の隣で一緒に寝ていたので、夜ベッドに入るたびに、そのぽっかりとした隙間ができることにどうしてもなじめず、眠れなくなった。そんなとき、私は猫の骨壷を抱いて眠りについた。
やがてGWに入り、実家に帰省したとき、父親に「あれ、骨壷なんで持ってこなかったの?」といわれたが、まさか「いや~、眠れないとき骨壷抱いて寝てるもんで(笑)」とは言えず、笑ってごまかした。ただ、母には正直にそう打ち明けると、
「昔、沢村貞子っていう大女優がいたの知ってる? 彼女は早くに旦那さんをなくしちゃったんだけど、その骨をお墓にいれずに骨壷に入れたまま持っていて、出かけるときにぱかっと開けて「行ってきます」、ご飯食べる前にまたぱかっと開けて「ご飯だよ」とか話しかけていたらしいよ」
という話をしてくれて、それでとても救われた気持ちになった。
今は亡き我が老猫よ。夏に帰省するときには、土に還してあげるね。向こうで住井すゑさんにかわいがってもらいなさい。
BGM:You're Beautiful/James Blunt