子供の頃、テレビで戦時中の日本軍の映像を見ていたら、マケドニア国旗のようなものが映っていて、あれ?と思った。
それはいわゆる旭日旗だったのだけれど、白黒の映像だと配色が分からないし、太陽が光を放つようなデザインであるため、マケドニア国旗に見えてしまったのだった。国旗が好きだった私は日本人であるにもかかわらず、あのようなデザインを見て初めに旭日旗よりもマケドニア国旗を想起してしまった。
幼い頃の私はその国旗以外、マケドニアについて何も知らず、もっと関心を持つようになるのは大学生の時だ。
既出の投稿にも書いたように、私は大学生の時にバルカン半島、とくにアルバニアに興味を持つようになる。アルバニアについて知ろうとすると、おのずとマケドニアについての情報にも接するようになる。
ある日、ネットニュースで目にした画像ではアルバニア国旗を持った人々がスコピエ市内を行進していたが、それはマケドニアのアルバニア系住民による政府への抗議集会だった。
たくさんのアルバニア系人口を擁するマケドニアの国政では、彼らがいわゆるキャスティングボートを握っている重要な層だったりする。旧ユーゴ領内で発生した今のところ最後の紛争もこのコミュニティーに関係していたりと、マジョリティーのマケドニア系の人々にとっても無視できない存在のようだ。現政権で外務大臣を務めるオスマニ氏(Bujar Osmani)もアルバニア系で、彼のFacebook投稿はマケドニア語とアルバニア語のバイリンガル表記になっていることが多い。
また、この二国間、二民族間のトピックを扱う際に触れなければならないのが、マザーテレサだろう。
彼女はマケドニアのアルバニア人家庭の出身であるため、マケドニア人とも言えるし、アルバニア人とも言える。両国とも彼女をシンボルのように位置付けているようで、今年スコピエでマザーテレサに関する催しが行われた時には、マケドニア政府要人のみならずアルバニアのベガイ大統領(Bajram Begaj)なども出席していたし、アルバニアの首都ティラナの国際空港もマザーテレサ(Nënë Tereza)の名を冠している。
物騒な話ばかりになってしまうが今年、マケドニア国内のアルバニア系コミュニティーをコソボのクルティ首相(Albin Kurti)が"勝手に"訪れてしまったようで、ペンダロフスキ大統領(Stevo Pendarovski)は大アルバニア主義への警戒心に根ざして苦言を呈していた。
https://lajme.rtsh.al/artikull/komentet-per-viziten-e-kurtit-pendarovski-nuk-jam-albanofob
大アルバニア主義というのは、アルバニア国外のアルバニア系居住域も含めて一つのアルバニア人国家と捉える思想、とでも言っておこうか。英語ではGreater Albania、アルバニア語ではShqipëria e Madhe という。(上のリンクの記事中のShqipërisë së Madheはその属格形)
大アルバニア主義については以下のドイチェヴェレの記事が扱っている。
DWhttps://www.dw.com › greater-alban...Greater Albania – threat to peace or pipe dream?
マケドニアについて書こうと筆をとったらアルバニアの話が多くなってしまった。バルカンについては今後もアルバニアを中心にマイペースに理解を深めていきたいが、その上でもマケドニアに関する知識は大切だ。
(※現在、日本政府が用いている呼称は「北マケドニア」だが、本稿では「マケドニア」で統一した。)