あ、この人、英雄たちの選択に出てたな。


紙面に大きく掲載されたインタビュー記事は、とある文化人類学者のものだ。


NHKの番組『英雄たちの選択』では、日本史家の磯田道史さんを中心にしてさまざまな有識者が日本の歴史事象を論じる。


https://www.nhk.jp/p/heroes/ts/2QVXZQV7NM/


最近はあまり観れていないのだけど、一時期は毎週欠かさず録画して観る数少ない地上波番組だった。


日本史にも海外諸地域の歴史にも興味があるが、私の場合、この番組は、あつかうトピック以上に出演陣の議論を聞くのを楽しみに視聴してきた。


とりあげる話題は前近代にせよ近現代にせよ基本的に日本史である。


しかし、この番組の面白いところは、それを議論する出演者たちの専門分野が日本史のみではないところだ。


司会の磯田さんとアナウンサーのかた以外の出演者は毎回違っていて、たとえばその回で扱うのが戦国時代ならば戦国時代を専門とする日本史家がいるが、その他数人の出演者の専門は、たとえば政治学、脳科学、文化人類学、社会学、経済学など様々で、彼らのピンポイントな研究対象も日本の事だったり、そうでなかったりする。しかも学者にとどまらず作家、小説家、学芸員などとにかく広範な顔ぶれだ。なそんな出演陣が、じつに多角的な視点から日本史を議論する。


私がこの番組をキッカケに知った専門家はけっこういて、実際に著作にあたってみることもあるし、そうでなくとも、へえ、こういう分野や概念があるんだなと関心が芽生えたりする。


これ、社会学の用語で再帰性と呼ぶんですけどね、と文化人類学者が発言すれば、手元の『社会学のエッセンス』を開いてみる。お、あった。


この合戦の激しさはまるで203高地のようですよ、とインテリジェントなインテリジェンス史研究家。203…たしか日露戦争のやつだよな。どんなんだっけ。えーっと山川の日本近代史はどこにあったかな。


この制度はいわばグラミン銀行の大先輩ですね。あー、あのバングラデシュの。エリアスタディーズに何か書いてないかな。


いろんな方向からいろんなキッカケの矢が飛んでくる、群雄割拠の知性の合戦である!とナレーターの松重豊さんが言うわけではないが、(あまり良い表現じゃないな、自分でやっときながら。)私はそんなテンションで自分の浅識を思い知らされながら高度な議論に刺激される。


難しいだろうが、番組がもしYouTubeなんかで公開されたら部屋で垂れ流しにして聴くんだけどな。まあ、ちゃんとテレビで観るか、贅沢言わずに。