私は引退しましたが、今の時期は「学校の運動会の撮影」が忙しい時期です。

 

昔のフィルムカメラの時代は、「ご家族カメラマン」というのはそんなに多くなく、我々プロカメラマンはわりと自由に撮影できたのですが、デジタル時代になり、「立派なカメラを持ったご家族カメラマン」さんが、ものすごく増えました。

(低学年の徒競走のゴール付近のカメラマンの数は、この前のジャニーズ事務所の記者会見のカメラマンの数に匹敵します)

 

その結果、プロカメラマンが、トラックの中で、大きな機材を抱えて、まっすぐに立っていると、「おい、じゃまだよ! しゃがめ!」と怒られます。移動の際も、「じゃまだよ!」と言われるので、コサックダンスみたいにしゃがみながら移動します。

これ、けっこう、足腰にきて、重労働です。

 

というわけで、デジタル時代は、「ご家族カメラマンへの配慮」というのが非常に大事になってきました。

「配慮しながら、卒業アルバムのために、いい写真を撮る」、これがプロの技ですが、難しいものです。

 

というわけで「周囲への神経使い」というのが大事です。プロカメラマンはもともと修行時代に養った技術で、「右目でカメラのファインダーの中をのぞきながら、左目の肉眼で、周囲の様子を見る」ということをしています。

神経が2回路必要なので、高度な技術ですが、カメラを構えながらも、周囲の様子を見ているのです。

 

具体的には「徒競走のゴールシーンを撮影しながら、次の組のスタートの様子を見ている」「騎馬戦で、ひとつの対戦を撮影しながら、もうひとつの目で、よそで、どこか盛り上がっていところはないか探している」なんてことをしているわけです。

 

そういうことで、「両目を駆使する」というのは、フィルム時代からやってきたんですが、デジタル時代になって、別の技を編み出しました。

 

カメラボディ背面には、このように大きな液晶画面がありますが、これがガラスでできているため、これを「鏡」として使う技術です。

 

前を見ながらでも、時々、この液晶画面の反射を見て、後方の様子を見るんです。

自分が撮影している時に、自分のすぐ後方で、ご家族カメラマンが撮影していて、こっちの様子を見ながら、「じゃまだな、こいつ」という顔をしていたら、撮影ポジションをかえてあげて、その人が撮りやすいようにしてあげる、なんてことをやっています。

 

こっちは後ろを向いたりしないでやってますから、おそらく、向こうは、前にいるプロカメラマンがそんなことをしていることはまったくわからないと思います。

 

ただ、ご家族カメラマンが増えて、こういう技術も編み出して、なるべく、邪魔をしないように気を使っているわけです。

 

※このように、運動会の撮影の仕事は、けっこう神経を使う大変な仕事になりました。