写真屋にとっての最大の難敵、それは「瞬き」「目つぶり」(※半目も含む)です。、
ビデオなどの「動画」では、まったく気にしないでいいのですが「一瞬を切り取る」写真では、瞬きが致命傷になります。
昔、フィルムカメラで写真を撮っていた時代の「学校の集合写真」というと、フィルム枚数の関係で、1カットで2枚しか撮影できませんでした。
そして、我々が「目つぶり星人」と呼ぶ、「写真撮影時に、とにかくよく目を閉じてしまう人」というのは、だいたい、20~30人に1人くらいはいるものでして、つまり、「1クラスに1人は、ほぼ必ずいる」という前提で撮っています。
ちなみに、私の高校の入学式の集合写真(45年前に撮影)では、目を閉じている生徒が5人写ってました。ここまで大人数が目をつぶっている写真を撮るのは、ある意味、名人芸かもしれません。
2枚しか撮れない「フィルムカメラ」時代に、いかにしても「目つぶり写真を避ける」「目つぶりの確率を下げる」のか???
プロの秘技というものもありました。
「よく目瞑りをする」という人は、「合図に釣られて目をつぶる」という人がいます。
つまり、「ハイ、チーズ!」の「ズ!」の瞬間、シャッターと同時に目をつぶるのです。
「3 2 1 ゼロ!」の「ゼロ!」の瞬間に目をつぶるのです。
こういう人は、目をつぶるためのカウントダウンをしているようなものなので、8割くらいの確率で目をつぶってしまいます。
そこで、プロカメラマンは、「タイミングを微妙にずらす」ということをしてました。
「ハイ、チーズ!」の「チ」の瞬間にシャッターを切ります。そうすると、目を閉じる前に撮ることが可能です。
「1 2 の3!」という掛け声の場合は、「2」の時にシャッターを切ります。
「撮りますよ! ハイ!」という掛け声の場合は、「イのあと」ではなく、「ハ」の瞬間に切るのです。
0.1秒くらいの時差をわざと作ることによって、「瞬き写真を防ぐ」努力をしていました。
また、人間は「びっくりすると目を開く」習性がありますから、写真を撮る際に、ものすごい大きな声を出して、相手を驚かす、という手法も使いました。ただ、こういう「驚かす」系の技は、「1組の時は有効だったが、2組3組ではネタがばれていて、使えない」という欠点があるのがつらいところです。
さて、「写される側」の立場で考えますと、よく目瞑りをする人は、自分が「よく目をつぶる」ということがわかっていて、そのために、「これから写真だ、がんばって目を開けていよう」とずっと頑張って開き続け、そして、疲れてしまった時に、カメラマンの合図によって、目をつぶってしまう、ということがよくあります。
なので、がんばって、目を開け続けるではなく、「じゃあ、撮りますよ。いきますよ~ 」くらいまで目を閉じていて、「ハイ チーズ!」の時に目を開ける、という手もあります。特に、太陽が眼の前にあって、すごく眩しいところでの集合写真では、「まぶしいから目を閉じる」ということが多いので、まぶしさを軽減するために、この手法を使う場合もあります。
「緊張すると目をつぶる」「疲れると目をつぶる」ということもあります。このため、「準備であれこれ疲れていて」&「一生に一度のことなのですごく緊張している」という「結婚式」の新郎新婦は、目瞑り写真がすごく多くなります。
結婚式場の写真スタジオのほうも、それはわかっているので、昔のフィルム時代は、「目瞑り確認用の専門の助手」というのがいて、カメラマンがシャッターを切った瞬間に、大相撲の審判の物言いみたいに手を上げて、「目瞑りありました!」と指摘しました。そして、カメラマンは再撮影をしたのです。
さて、カメラ機材がデジタルになり、「2枚しか撮れない」というフィルム時代と異なり、「何枚でも撮れる」時代になりました。
となると、なるべく多くの枚数を撮って、「全員がちゃんと目を開けている写真」にしようと考えるのが、カメラマンの習性です。
目瞑り星人は、「10枚撮ったら、8枚は目をつぶっている」という人ですから、最低でも6枚くらい、できれば10枚以上撮りたいものです。
※今はデジタルだから、あとで、デジタル処理で、「目の開いているコマから持ってきて合成すればいい」と言う人もいますが、合成の手間も大変だし、微妙に、クビと胴体がずれている、なんていう変な合成になる場合もあり、なるべくなら合成はしたくないのです。
昔の「2枚で終わった」時代の人は、今のデジタル時代の「10枚も撮る」というのに慣れてなくて、「いつまで撮ってるんだ。早く終わらせろ!」と怒ってしまう人もいるんですが(笑点の三遊亭好楽さんに、これで怒られたことがあります)、目瞑り星人は、カメラマン側の問題ではないので、なにとぞ勘弁して、おつきあいをお願いします。
さて、デジタル時代に、「困ったこと」が起きました。それは、「無線ストロボの時差」です。
昔のストロボは、コードでカメラと接続していましたが、今は、コードがなく、電波で指令を出してシャッターを切るようになりました。コードがない分、とても便利なんですが、こまったことに、「カメラのシャッターボタンを押した瞬間にストロボが光る」のではなく、0.2秒くらい遅れて、実際のシャッターが切れるのです。つまり、カメラマンの「撮った」というタイミングと実際の「撮影した」タイミングが違うのです。
この時差が問題でして。
上で書きましたが、プロカメラマンは「0.1秒の時差をわざと作ることによって、目瞑りを避ける」という技を使うのですが、電波式ストロボの使用によって、これが無効になってしまうのです。
このため、有線ストロボを使っていた時代よりも、今の無線ストロボを使っている時代のほうが「目瞑り写真」が増えてしまいました。ただ、長年,体に染み付いた「微妙なタイミング」というのは、変えるのが難しくて・・・・・これが、今の悩みです。まだまだ修行が必要です。
ところで、ストロボを使わなくても済む、「屋外」「順光で全員にちゃんと日光が当たっている」ような集合写真(学校の遠足とか運動会とか)では、今の若いカメラマンさんは、最初からデジタルカメラに慣れている人なので、「バババババ・・・・!」と、高速連射で集合写真を撮ってしまうそうです。「いっぺんに10枚撮れば、そのうちの2~3枚は全員が目を開けているコマになるだろう」という「数打ちゃ当たる」作戦だそうです。そういう方法もいいかもしれません。早く終わるし。
でも、うちの事務所で撮る集合写真は必ずストロボを発光させるため、この手法は使えません。残念。
いや~、でも、ほんと、集合写真は毎回「目瞑り星人がいないように」とお祈りしながらとっております。
1人いるだけで、写真がパ~になりますからね。
このように、集合写真の時って、ものすごい細かな神経を使って、カメラマンは撮っています、よく、プロカメラマンのシャッターのタイミングに合わせて、後方で、家族カメラマンさんがフラッシュを光らせていたりしますが、あれをやられると、すごく迷惑なので、できれば、おやめ下さい。お願いします。
※上記のように、素人さんは必ず「目つぶり」をするものなんですが、これが「プロのモデル」とか「一流芸能人」となると、ちゃんと合図をして撮れば、絶対に、目つぶりはしないんです。「さすが、プロ」だと思います。