演芸が好きで、よく寄席に行くんですが、「何十年も同じ枕を話す落語家さん」とかいます。
「安定のギャグ」とも言えますが、頻繁に寄席に行く客としては「たまには別のことを言ってよ」と思う場合もあります。
さて、昔、学校写真を主にしていた頃。
修学旅行のメッカである「日光」には、ほんと何回も行きました。
メイン観光地である「日光東照宮」には、専門の「案内人」さんがいて、
修学旅行では、ほぼ100%、この案内人さんを頼みます。
何十回も日光に行ってると、「顔なじみ」の案内人さんもできてくるわけですが・・・・
中に数人、「名物案内人」みたいな人がいて、その人の案内の様子を何回か見ていると、「ここではこういう説明をする」「ここでは、こういうギャグを言って笑わせる」という「パターン」を覚えてしまいました。
「日光のみのもんた」という有名ガイドさんも、ほんとギャグがいっぱいで、毎回、子どもたちを笑わせていました。
私らからすると「また、同じことを言ってる」「毎回、一字一句同じことを言ってる」と思うのですが、お客さん側からすると「一期一会」でして、皆さん、「このガイドさんの話を初めて聞く」人ばかりですから、このやり方で問題なく、安定して人気を得ているわけです。
(そういえば、十和田湖の有名人である「ルパン3世の格好をした、お土産屋さんの店主」も、「オレはルパン3世じゃない。ルパン2世だ。偽物だから」という常套ギャグで笑わせていました)
さて、一期一会といえば「ウェディングスナップ撮影」も同様でして。たいていのお客さんは「初めて会う人」「2回目ということはまずない」というものです。
普通の商売だと「またよろしくおねがいします」とか「再度のご来店をお待ちしています」とか言うものですが、婚礼の仕事では、それは「禁句」です。
一期一会の仕事なので、お客さんとは「初めて合う」ことばかりだし、「前回と同じでお願いします」というのはないため、打ち合わせも念入りにやらないといけないわけで、こういう商売は、けっこう手間がかかって大変です。
ただ、「初めて会う人ばかり」なので、上記の「日光の案内人さんのギャグ」同様、毎回、同じことを言っても、ちゃんとウケるわけでして。「ジョークで場を盛り上げる」という観点では、楽なんです。
ウェディングスナップを長年やってると、「この場面ではこのギャグ」「その場面ではこのジョーク」「ここでは、あの蘊蓄を語る」など、だいたい「30」くらいの常套ギャグ(ほとんどがオリジナルで自分で開発したものです)を準備しているようになり、それで笑顔をいっぱい撮っていました。
ビデオカメラマンはあまりカメラマンがしゃべることはないですが、スナップカメラマンは、ある程度のレベルになると、「撮影技術よりもしゃべりが大事」という面があり、「おしゃべりの名人芸」といいますか、「引き出しの多さ」が、一流カメラマンの証だったりしてました。
そういうわけで、ギャグでも一流になってきたのですが、その頃には、自分の年齢も高くなり、あまりにも新郎新婦と年齢が離れてくると、世代ギャップといいますか、波長を合わせるのは、なかなか難しいものがあります。(逆に、新郎新婦の親御さんとか祖父母には年齢が近くなって、コミュニケーションが取りやすくなりますが)
ある程度の「話術」も極めたつもりでしたが、体力的にも、ウェディングスナップはきつくなり、今は引退し、後進に道を譲った次第です。
さて、今、撮影しているのは、婚礼のように「二度と同じお客さんに会うことはない」という分野ではなく、「毎年お会いする」といったものが多くなっています。これは「ギャグの使いまわし」が効きません。「去年と同じだ」と言われては恥ずかしいので、毎年、別のギャグを用意しないといけませんが、
「去年はあのギャグが受けたけど、今年のこのギャグはすべった」
ということがよくありまして。
けっこう、「新しいギャグ」を考えるのは疲れるもんです。でも、ボケ防止にはいいかもしれません。
そういうわけなんで、もし、スベっても、温かい目で見ていただけたらと存じます。