今日はニコンという会社の「黒歴史」とも呼ばれている、悲運のカメラ 「Nikon1」シリーズの話です。かなり、マニアックな話になります。お好きな人だけ読んでください。恐縮です。

 

 

 

ある日の「ステージ撮影」の仕事の時の「リハーサル撮影」時の機材です。3台のカメラを使用します。

 

上から

①Nikon 1 J1 超広角ズーム

②Nikon Z5 24-70 F4

③Canon 7DⅡ 70-200 F4

という布陣です。

 

リハーサル時はNikon Z5の標準ズームをメインカメラにします。(※Z5はSDカード2枚差し Z6やZ7は1枚だけなので、プロの仕事は使えないのです)

望遠はCanonに任せます。リハーサル撮影時は動き回るため、軽さが大事で、そのため、f2.8ではなくF4のズームを使用します。

 

そして、超広角をNikon1 J1に任せます。

 

 

 

Nikon1は、センサーサイズが小さく、センサーの画質はかなり悪いです。マイクロフォーサーズよりも悪いです。高感度も弱くて、ISO1600を超えるとざらざらで使い物になりません。きっと、今のスマホよりも悪いかもしれません。

ただ、この超広角ズーム

NIKKOR VR 6.7-13mm f/3.5-5.6

は、意外と性能がいいんです。高価だけあって、描写力は悪くないです。

そして、小型で軽量で、AF性能がそこそこいいんです。特にJ1はファインダーがない分、軽量です。

小さいために、被写体に与える圧力が小さく、こんなアングルで撮れたりします。

ファインダーを覗かないので、高い位置や低い位置、普通のカメラでは入りにくい狭い場所にも手を伸ばして入ってしまいます。

画質が悪いとはいえ、この「機動力」は貴重で、ちょっと普通じゃない、面白いアングルの写真が撮れます。誰でもスマホでいい写真が撮れる現代では、「普通じゃない」写真に、プロの価値があります。

 

そして、Nikon1のいいところは、機種によっては「インターバルタイマー撮影」ができるということです。

これは、「10秒ごとに1枚ずつ、自動的にシャッターを切ってくれる」といった機能で、これにより、「無人撮影」が可能になります。

 

大きな写真事務所ではない、「カメラマン1人で全部やる」、うちのような個人事務所では、「一人なのに2~3人で撮っているかのように」するための、貴重な戦力になります。

 

 

本番撮影では、客席最後方の「定位置」に、メインカメラを立てますが、一度立てた三脚はほぼ動かしません。ですから、アングルはみんないっしょになります。そんな時に、別のアングルで撮れるように、メインカメラとは離れた場所に、Nikon V1&望遠ズームを置きます。インターバル撮影にして無人撮影します。ピアノ発表会などのように、「被写体の位置がほとんど動かない」演目では、有効に使えます。V1も小型なので、そんなに目立ちませんから、お客さんの邪魔になりません。

ただ、目立たないと、ぶつけられたり、蹴飛ばされたりします。そういう懸念がある際は、

 

白ボディのV1も持っているので、これを使用します。「無人撮影中です」という紙も置いておきます。

 

 

オーケストラの撮影なんかでは、客席からは「指揮者の顔」は撮影できませんが、このNikon1を目立たないように、ステージの端っこに忍ばせて、本番時に指揮者の顔を撮ったりすることも可能になります。

 

 

これは、ブラスバンドの本番演奏時の写真ですが、高い場所にある「照明室」の中に、Nion1をセットして、無人で撮影しています。こういう俯瞰のアングルはなかなか普通は撮れませんが、小型で、狭い場所にもセットできるNikon1の特徴を活かして撮影しています。

 

というわけで、うちの事務所の「ステージ撮影」では、実は、Nikon1は隠れた大活躍をしており、10年くらい使い続けていますが、いまだに、なくてはならないカメラなんです。

 

また、小型ということで、荷物を軽くしたい旅行先に持っていくのも便利です。Nikon1には10倍ズームもあるんですが、10倍にしては、意外と画質もよく、「撮り鉄」でも活躍します。

 

というわけで、Nikon1シリーズは「撮影業務」でも重宝してますし、プライベートでも便利なため、気がつくと、たくさん買ってました。

 

この機会に全部ご紹介します。

 

 

Nikon1 J1 ・・・安価ではあるものの、金属外装だし、デザインもまあまあだし、なかなか気に入りました。画素数が1000万というのも、ちょうど使いやすい、必要十分なもので、最適でした。ストロボも内蔵されており、婚礼撮影の仕事の時の非常時用の「予備の予備」としても最適でした。ただ、購入時についていた「標準ズーム」の性能がイマイチだったのが残念。画質のいい、別の標準ズームを買い足しました。Nikon1が失敗した原因のひとつが、この「キットレンズの性能が悪かった」というのがあると思います。このせいで「Nikon1は画質が悪い」と多くの人が思ってしまいました。Nikonにしては残念な手抜きです。

 

Nikon1 J1 ・・・このカメラ、インターバルタイマー機能があることで、「仕事でも意外と使える」とわかり、追加でもう1台買ってしまいました。

 

③Nikon1 V1・・・フラッグシップモデルでけっこう高かったです。「1000万画素は使いやすい」「ファインダーがあっても、ほとんど出っ張らず、ボディがそんなに大きくない」「プロの撮影では使わないストロボをつけなかった」「バッテリーが他のニコン一眼レフと共用で、大容量(インターバル時は、2時間連続で使用できる)」「インターバルタイマー機能あり」ということで、「これは、ほんと、仕事で使える」と確信しました。ただし、撮影モードダイヤルが勝手に動いてしまう、という致命的欠陥がありました。こういう「使えばすぐにわかる」欠陥をそのままにして売り出してしまうのが、ニコン社の「ユーザーのことをよく考えない」性格が出ていると思います。この欠陥により、このカメラの評価が大きく下がってしまいました。

※それから、ホワイトバランスをK数で手動設定することができないのが残念。

 

④Nikon1 V1・・・仕事で使える、ということで、もう1台買い足しました。この際、使い分けしやすいように白ボディにしました。

 

⑤Nikon1 V1・・・③のV1が酷使しすぎて壊れてしまったため、買い替えということで、もう1台買いました。(中古を探しました)

 

⑥Nikon1 J3 ・・・これは残念ながら、インターバルタイマーがついておらず、仕事では使えません。画素数も上がってしまい、後継機なのに高感度も悪く、使いにくくなってしまいました。ただ、安売りしてたので、プライベート用に買いました。でも、旅行中に落下させてしまい、壊れてしまいました。残念。

 

⑦Nikon1 V2・・・これも、インターバルタイマーがついておらず、画素数も上がって、画質が落ち、仕事では使えません。(こういう改悪をするのがNikonの悪いところ) でも、グリップが良くて、見た目はすごくかっこいいので買ってしまいました。ストロボが内蔵になりましたが、小さくまとめてあって、いい感じです。でも、最悪なのが「バッテリーを変えてしまった。それも、この機種専用で、他のカメラでは使えないものだった」というのが、ほんとひどい改悪でした。なんでV1と共通にしなかったんでしょう? 開発陣、バカだと思います。

 

 

⑧Nikon1 AW1・・・特殊なカメラで、水中撮影が可能な防水カメラです。臨海学校の同伴撮影とかの仕事があるので購入しました。これも画素数が多すぎでした。

 

 

というわけで、当事務所にはNikon1シリーズのカメラが8台もあります。(※うち2台は使用不能) 世界中にNikonを使用するプロカメラマンは何万人もいると思いますが、Nikon1を一人で8台も買った人って、おそらくうちだけじゃないでしょうか? Nikonから表彰してもらいたいくらいです。

 

このシリーズ、私にとっては有効なカメラでしたが、一般的に考えると、上記いろいろ指摘したように欠点もあるし、時代のニーズにあってなかったのはたしかです。性能がイマイチなのに、価格はけっこう高かったし、アマチュアの人に支持されず、買ったのはおそらく「古くからのニコンファンが話の種に買っただけ」という感じで、廃盤になってしまったのも、しかたないと思います。観光地に行っても、私以外にNikon1を持っている人を見かけたことはありません。

 

やはり、ニコンは販売戦略が下手ですね。今はセンサーやエンジンの性能があがってるから、最先端技術で、また、ニコン1を作って欲しいですが、絶対に無理でしょう。残念です。

 

それにしても、このシリーズで「プロが仕事として今だに使い続けている機種」は、最初に登場した「V1」と「J1」であるってことからも、このシリーズが「新製品を出す度に失敗している」ということの証拠です。ほんと、ニコン、アホです。