カメラマンというのは映画好きな人が多いのですが、私もかなりの映画好きです。劇場とDVDを合わせると、年間「200本」くらいは見ています。
そして、「このアングル、仕事で使えるかも?」なんてことを思いながら、自己研修を兼ねて見ております。
そんな生活を還暦過ぎても続けているので、自分では「かなりの映画通」だと自負していたのですが・・・・・・・
恥ずかしながら、今回初めて見た「東映教育映画」というもの、全然知りませんでした。
ヤクザ映画で有名なあの「東映」では、昭和29年から、教育映画部というものを作って、500本ほどの映画を作っていたそうです。
教育映画・教育ドラマというと、NHK教育テレビの「さわやか三組」とかそういうのを思い出しましが、そういうのを東映でも作っていたそうです。(時代的には東映のほうが先ということになります)
そして、劇場公開はせず、学校とか公民館で上映して子供たちに見せていたらしいです。
なので、一般の目には触れなかった映画です。
参考 東映教育映像の魅力とは
さて、今回見たのは、その東映教育映画の第一作で昭和29年制作の「ふろたき大将」という作品。
参考 東映ビデオ
45分ほどの短編ですが、素晴らしい作品でした。
時代は昭和25年くらいで、舞台は原爆投下後に復興に頑張っていた広島。そこで戦災孤児になった子供二人が、瀬戸内海の小島にできた戦災孤児を集めた福祉施設に入る話です。この学校は実在のもので、今でも存在しています。
特筆すべきは、この主人公を演じる子役の役者さん。
なんと、石橋蓮司さんです。
予備知識ゼロで見た映画でしたが、今と全然顔が変わらないので、すぐに「え? 石橋蓮司じゃないか!」と気が付きました。
なんと、この作品で俳優デビューしたそうです。
年の割には高身長ですが、声変わりする前の甲高い声で、見事に演じています。
この映画には、校長先生役で、名バイプレーヤーの神田隆さんも出ています。一般的には悪役で有名ですが、この作品ではものすごく「いい人」でした。NHKのドラマでは有名な俳優さんが出ることはないですが、東映教育映画では、もとが東映ですから、そこから有名な俳優さんを借りて出演してもらっているようです。
(ハナ肇さんが出演した作品もあるらしいです)
ストーリーは、原爆孤児の石橋蓮司演じる「徳さん」が、この学校に入るものの、「算数もできない」「読み書きもできない」ことから、他の子供たちからいじめられる~そこで校長が徳さんが焚火が非常に上手なことに目を付けて、お風呂の管理を任せる(だから、ふろたき大将)~そこで自分の居場所を見つけた徳さんが勉強も頑張り、みるみる成長して、新聞に載るまでになる~新聞を見た会社の社長さんから就職の話をもらい、中学卒業と同時に、自分のやりたい仕事に就き、島を出ていく・・・・ という、ハッピーエンドの話です。
素直に感動しますよ、この映画。
子役がいっぱい出てきますが、この中には実際に、この学園で勉強している戦災孤児も大勢いたそうです。
そして、音楽担当は、ゴジラで有名な「伊福部昭さん」でした。ラストシーンの音楽は「怪獣が進撃していくような感じ」の曲になってました。
東映教育映画、こんな素晴らしい作品をいっぱい作っていたのなら、今、テレビで放送して欲しいと思います。
特に、今、ウクライナで戦争が起きていますが、戦争の悲惨さを伝えてくれる、この「ふろたき大将」は、今こそ、地上波で放送して欲しい作品です。
なお、広島では、この作品の続編ともいえる「ふろたき大将 故郷に帰る」というテレビドラマをNHKが2016年に制作し、石橋蓮司さん本人が主演し、放送されたそうです。これも見たいなあ。
とにかく、初めて知った「東映教育映画」という存在。恥ずかしながら皆さんにも紹介した次第です。



