この前の「ピアノ発表会」の撮影。

「初めて発表会を開催する先生」だったので、ホールのスタッフから、「先生、ピアノを置く位置はどこにしますか? ご希望とかありますか?」と聞かれた時に、「え? そんなこと言われても~」と悩んでしまいました。

 

写真撮影するこちらとしても、「三脚をセットする場所」を決定するには、ピアノの位置を確定してくれないと困るわけで、最も基本的なことで悩んでもらっても、時間の浪費になってしまいます。ホールスタッフも、ピアノの場所が決まらないと、照明の調整もできないので、「先生、早く決めて下さい」と、心の中でお願いしておりました。

 

最終的に、「カメラマンさんが決めてくれませんか?」となりましたが、その時は、まだ、「装飾の花」が到着していなかったため、「花とのバランスを見てピアノの位置を決めたい」私としてはちょっと困ったんですが、自分なりに過去の経験で培った「基準」というのがあるため、それで、位置を決めさせていただきました。

 

 

私の基準は、「ピアノの蓋を支える柱」を「舞台の中央」にセットするものです。

 

これは「離れたところからでも見やすい」ので、「柱をセンターにして下さい」とお願いしやすいです。

ステージ全体を見た時に、ピアノがほぼ中央に来る「バランスの良い位置」になります。

 

ちなみに、あとで、このホールのスタッフに「そちらでは、基準にしているものはありますか?」と質問したら、「うちでは、ハンマーをセンターにしている」とおっしゃってました。

 

 

ハンマーというのは、ピアノの弦を叩く部品です。

私が基準とする「蓋を支える柱」とは10センチほどしか離れていませんので、「ほぼ同じ」と考えていいかと思います。

 

いっぽう、ベテランの先生の中には、自分なりの基準を持っている場合があります。

「右側の客席から見ても、演奏者が見えるように」と考えて、ピアノの位置を客席から見て右側(=上手)に寄せるケースがあります。

 

舞台全体を見た時に、左右のバランスが悪くなるのですが、「よく見える客席の数を増やす」という理由がありますから、これはこれで、ひとつの方法であり、カメラマンやホールスタッフは、先生の指示に従います。

 

なお、ホールによっては、先生の意見を聞かずに、「うちはこの位置なんで、ここに置かせて下さい」と言うところもあります。

これは、「一定の場所にピアノを置けば、ピアノに当てる照明の調整をしないで済む。昨日と同じ照明でいけるから楽」といった意味合いがあります。

まあ、省力化というわけです。

 

 

ただ、この写真のような、いろいろな用途に使用できる「多目的ホール」で、舞台が電動で上下に動くところでは、ステージ部分の構造が、固定した舞台よりも貧弱になるため、「舞台の下にある、木材の梁の位置によって、ピアノの響きが変わる」という要素があり、それを考えて、「ここに置くのが一番いい音が出る。だから、そこに置く」というケースもあります。

 

発表会では、調律師さんを雇って調律してもらうことがありますが、調律師さんがピアノの位置にこだわって、「ここが一番いい音がするよ」と指示することもあります。

 

なお、左右の位置ではなく、「奥行き」を考えて、どのへんに置くか? というのもありますが、これも、基準となるだいたいの位置が決まっていますが、「ピアノだけでなく、声楽もある」なんて場合は、声楽の人が立つ位置を確保するために、少し、ピアノを奥に置くとか、「足の悪い生徒さんがいるため、万一の転落事故などを防ぐために、少し奥に置く」、なんてこともあります。

 

写真屋的には、「バランス」と「照明が一番きれいに当たる位置」を重視します。

 

 

 

さらに、「置く位置」だけでなく、「ピアノの回転角度」を気になさる先生もいます。

わざとまっすぐ置かないのです。

 

天井からピアノを見下ろしたと考えて、ピアノを時計回りに少し回転させると、

 

 

客席からはこんな感じに見えるようになりますが、これは、手元は見にくいですが、連弾の時でも、顔が見えるようになります。

 

逆に「反時計回り」にすると、

 

 

顔は見にくいですが、手元や鍵盤がよく見えるようになります。

 

どっちがいいかは、先生の考え方によります。「演奏を見せるんだから手元がよく見えるほうがいい」と考える人もいれば、「顔がよく見えるほうがいい」と考える人もいて、それぞれです。

 

なお、「ソロ演奏の時は手元がよく見えるようにして、連弾の時は、顔がよく見える(奥の奏者の顔も見える)位置に変更する」といった、手法もあります。

「第一部はソロ 第二部は連弾」というふうに、完全に分かれている時は、そういう手法がよく取られます。

 

というわけで「舞台上のピアノの置き方」だけでも、結構奥が深いってことが理解していただけたかと存じます。

 

ご自分でポリシーを持っている先生の場合は、私達はそれに従いますし、「カメラさん、どうしたらいいですか?」と聞かれれば、上記の内容をご説明して、先生に決めてもらいます。

 

 

 

以上、参考にして下さい。

 

 

 

 

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