ある日の午後3時頃。行きつけの洋食屋さんでハンバーグランチを食べていた時。
カメラを持った、5~6人の中高年男女が入ってきて、食事ではなく、お茶をしながら、写真談義をしていました。
盗み聞きするのは悪いですが、とにかく、大きな声なので、強制的に私の耳の中には、その会話内容が入ってきてしまいます。
カメラがデジタル化して以来、ランニングコストが大幅に安くなったこともあり、写真を趣味にする人が急増しました。
特に中高年の方向けの写真教室なんかもにぎやかになっており、撮影で食えないプロカメラマンが、そういうのの講師になって、浪人の傘張りみたいに稼いでいるケースも多いようです。
いろいろな話をなさっていましたが、「プロカメラマンの定義とは?」みたいな話になってきて、皆さん、アマチュアの人なので、プロの実態などそんなに知りませんから、好き勝手、喧々諤々してました。メンバーの中には、「プロカメラマンンに知り合いがいるんだ」って人もいて、その人は、その知り合いのプロカメラマンを引き合いに出して、「プロというのはこういうものだ」的に得意気に説明をしていました。
実は、その店には、私の他にも数人のプロカメラマンが常連客としてよく来てまして、その店のマスターもカメラをやるんで、そのマスターはプロカメラマンというのがどういうのかよくわかっている人で、どうも、口をはさみたくなったらしく、その会話に混じってしまいました。
その店の常連客であるプロカメラマンは、私同様「営業写真」の畑の人たちで、「風景写真の写真集を出版して稼いでいる芸術家としての写真家」とは違うので、マスターがそういう営業写真のカメラマンの話をすると、どうも、「芸術系写真家だけがプロカメラマンだ」と思っているらしい、このメンバーからは異論が噴出し、マスターが言い負かされるようになりまして・・・・
そうなると、予想どおり、マスターが私の方を見て、「助け舟を出してよ~」という視線を送ってきます。
私は、そういう人たちの会話にはあまり加わりたくない人間なんですが、とうとう、マスターが、「実はそこにいる人、プロなんですよ」って言っちゃって。
それでプロの実情をご説明したわけですが・・・・・・ これも、やっぱり、どうも素直に納得してもらえなくて、困りました。
例えば、アマチュアの人がイメージするプロカメラマンって、「機材はすべて超高級なものを買い揃えている」とか思ってるようで。
「実は、メインに使っているのは中級機なんですよ」とか私が言うと、
「そんなのはおかしい。プロだったら、フラッグシップ(1台60万円くらいします)を使うべきだろ」とか反論します。
レンズにしても「最高級で超重いものを使っている」と考えているようですが、実際は、「なるべく軽いもので、ちゃんと写ればいい」と思ってますから、そういう最高級品は持ってないことを言うと、「おかしい。そんなのはプロじゃない」とか言い出すし。
また、ある人は、「プロはAFなんか使わずにマニュアルでピントを合わせている」とか誤解をしていて、「露出に関しては私はマニュアル専門ですが、AFとかTTL調光とか、便利な機能は使ってますよ」と言うと、「そんなのプロじゃない」とか怒り出しました。
なんか、私まで吊し上げを食らっているようで。
まあ、懇切丁寧に、「稼ぐためにやっているんだから、なんでもかんでも最高級品を買うと、ペイしない」ってことを説明し、「運送業者が、早く荷物を届けるためにって、フェラーリとかに乗らないでしょ?」とか、わかりやすいたとえ話なんかもして、なんとか、理解してもらいましたが、どうも、この人達の夢を壊してしまったようで、なんとも複雑な気分でした。
その後、わかりやすく説明するために、「まあ、わかりやすい基準としては、NPSとかCPSとかに入っている人でしょうね。カメラメーカー側が厳正な審査をしてプロとして認めているわけですから信用できますよ」とか「どんな撮影でにも、予備の機材を持っていって、万一の事態に備えている」とか「人物撮影の場合は、瞬きに備えて、まったく同じ写真を何枚もを撮る」とか説明し、これはなんとか理解してもらったようです。
こういうのって、説明するのも大変です。