プロ野球も、そろそろキャンプインです。

 

当ブログに「いいね」を押してくれた人のブログを拝見してましたら、「野球が好き」で「今、カメラの勉強をしている」ということで、その人の希望が「野球で、バッティングの際のインパクトの瞬間の写真を撮りたい」ということでした。

 

そう、野球の写真を撮る人は、ほとんど、みんな、こう思っています。私も、昔、K新聞の写真部で働いていた時に、そう思っていて、それなりの修行をしました。

というわけで、「プロ野球選手が身内にいる」&「プロカメラマン」として、この話題について書きたいと思います。

 

っていうか、今から5年前に、この件はすでに書いているので、その記事を加筆修正して、再掲載したいと思います。なお、当事務所は、「音楽発表会」などのステージ写真の撮影を主にしていますので、他の名だたる「スポーツ写真専門のプロ」とは違い、百何十万円もするような高級望遠レンズとか持ってないので、「ナンバー」みたいな写真は撮れません。その点はご了承ください。

 

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今回は、野球のお話です。
(夏の甲子園大会。神奈川は横浜高校が代表になりました。平塚学園惜しかったなあ。)

さて、野球の写真を撮るアマチュアカメラマンの人も多いのですが、皆さんが声を揃えておっしゃる、「これを撮りたいんだよ」というものをご紹介します。

★ 「ボールがバットに当たった瞬間の写真」(=インパクト)
これ、たしかに、カメラマンなら誰でもが撮りたい場面です。
でも、なかなか簡単には撮れません。プロだって大変なんですから。
といっても、今は、デジタルカメラの時代です。撮った写真をその場で確認することができます。これは画期的な進歩です。

フィルムカメラの時代だったら、試合の写真を撮って、それを現像に出して、何日か後に、出来上がった写真を見て、「あ~、これはタイミングが遅かったな」「あれ、これは逆に早すぎた」・・・・などと、あ~だ、こ~だと研究して、誤差を修正し、その次の試合でまた挑戦。そういうのを繰り返して、徐々に、「当たった瞬間」に近づいていったものです。
でも、今は、これが、ひとつの試合の中でできます。ですから、「スポーツ写真を撮影する人」にとって、デジタル化は非常に大きな恩恵を与えたと思います。
そういうわけで、ぜひ、「当たった瞬間」の撮影にチャレンジしてください。

当事務所からも、アマチュアの皆さんに、アドバイスを差し上げます。

・「機材は一眼レフカメラが必須です」
コンパクトデジカメとかスマホのカメラとかは、望遠側が足りませんし、シャッターを押してから実際に写真が撮れるタイミングがずれてわかりにくいため、まず、無理です。
オリンパスペンなどの「ミラーレス一眼」は、屋外のスポーツでは、背面の液晶が見難いのでお勧めしません。電子ビューファクィンダーがついているものなら、なんとか撮れないこともないですが、やはり、シャッターを押すタイミングの正確な制御がやりにくいため、ミラーレス一眼もあまり、お勧めしません。(※2018年追記 SONYの最新機種とかはかなりよくなっているので、ミラーレスでも撮れるかもしれません。なお、電子シャッターは、動きの速い被写体の場合、被写体のゆがみが出るため、お勧めしません)

・「一眼レフであれば、安い初級機でも構いません」
よく、「スポーツ写真は最高級の連写がバンバンできるプロ用の60万円とかする高額なカメラじゃないと撮れない」って考える人がいますが、それはたしかに、最高級機種のほうがベターですが、「ボールがバットに当たった瞬間」に限定していうと「連写は不要」なので、初級機でも大丈夫です。ただ、レンズは高級なもののほうがいいですが。

・「連写は意味ないです」
バットに当たった瞬間の写真は、「ものすごい高速連写で撮るもの」と思っている人が多いですが、実は連写は使いません。「一撃必殺」で撮ります。当たった瞬間というのは、本当に瞬間なんで、「バシバシ連写すれば撮れる」というものではないのです。

・「シャッタースピードは500分の1秒以上の速さで」
できれば2000分の1秒以上の速さが欲しいところですが、当たった瞬間というのは、ボールが一瞬止まりますので、500分の1秒以上で撮影すれば、なんとか、当たった瞬間が静止して撮影できます。
暗くて、500分の1秒のシャッタースピードが切れない場合は、ISO感度を上げましょう。スポーツ写真は、女性ポートレートみたいに、「きれいに撮る」ものではないですから、多少画像が荒れても、ISO感度は思い切って上げて構いません。

 

・「フルサイズか? APS-Cか?」

APS-Cのほうが、同じレンズでも望遠になるため、レンズに関しては、野球の撮影ではAPS-Cのほうが有利になります。

しかし、「ナイターの野球の撮影」では、「高感度が必須」(場合によってはISO12800が必要になることも)なため、感度に関してはフルサイズのほうが有利になります。このため、「APS-Cのほうがいい」とか「フルサイズのほうがいい」とか、一概には言えません。

個人的には、感度のことを犠牲にしても、ボディ価格の安いAPS-C機にして、レンズのほうにお金を使うほうがいいと思います。

 

現時点でのオススメ機種の具体例をご紹介すると、Nikonの場合・・・

ボディ=D7200 APS-C機。 9万円程度。現時点で旧式になったため、安価。しかし、基本性能は十分。なお、スポーツ写真では「縦位置」も撮るし、カメラをしっかりとにぎらないといけないため、「バッテリーグリップ」があるとベターです。純正でなくても中国製の安いばったもんでも大丈夫です。

レンズ=80-400mm  25万円程度 正直、めちゃくちゃ高価です。でも、ズーム域は広いし、描写も優秀なので、安いレンズをあれこれ試すよりも最初からこれを買ったほうがいいと思います。外野席からバッターを撮る場合、APS-Cの400mm(=600mm相当)でも、望遠は足りません。

 

・「三脚はあったほうがいいです」

あとから書きますが、野球の写真は、ファインダーの中だけを見ているのではなく、その周囲も常に見ていますので、カメラを固定できて、カメラから手を離すことができる「三脚」はあったほうがいいです。ただ、「友人の草野球を撮る」という場合は三脚を立てられるでしょうが、アマチュアの人がプロ野球の試合を撮る場合、報道カメラマン席には入れず、三脚をセットすることは不可能に近いので、「一脚」でもいいかもしれません。その場合、「三脚座」のついている望遠レンズのほうが、重心に近い場所に取り付けることができるため、便利です。

 

(機材の件は細かい話になるので、詳細を聞きたい人はメールを下さい。お答えします)

 

 

さて、機材の準備ができて、実際に撮影してみます。
撮影を始めるとすぐにわかりますが、「バッターがバットを振った瞬間にシャッターを切った」写真を見ると、実際は、「とっくの昔にバットを振り切って、ボールは画面の中に写っていない(キャッチャーのミットの中、もしくは、飛んでいってフィールドの中)」写真が撮れます。
要するに、「シャッターを切るのが遅い」ということです。

拍手喝采! イベント撮影カメラマンの備忘録 

こんな感じです。この理由を説明します。

「シャッターにはタイムラグがある」
こういうスポーツ写真を撮る際には、事前に、シャッターを半押しにして、バッターでピントを合わせておきます。そして、ずっとシャッターの指を置いたままで、すぐにシャッターを切れるように準備をしてファインダーを覗いたまま、ボールが来る瞬間を待ちます。

(※「親指AF」が可能な機種であれば、これを有効に使いましょう。便利です)

さて、そのように準備している状態でも、人間が頭の中で「シャッターを切ろう」と思い、それが神経を通って、指に伝達し、実際にシャッターボタンを押し込むまでに、0.2秒の遅れがあるといわれています。また、シャッターを押し込んでから、本当にシャッターが切れるまでにも、カメラ内での機械上の都合で、0.1秒程度のタイムラグがあります。
ですから、ちゃんとシャッターを押したつもりでも、実際は撮り遅れてしまうのです。
この後者の「機械的なタイムラグ」は、どんな最高機種カメラでもあります。ただ、高級機種になるほど、この時間が短くなりますから、高級機種は「押したらすぐに撮れる」という感じがします。
なお、神経のタイムラグは、その人その人によって微妙に違いますし、機械的なタイムラグも、カメラ1台1台異なります。機種ごとに違うのはもちろんですが、例えば、同じ「Nikon D5」でも、微妙に1台1台異なります。

 

このため、自分の神経のタイムラグはどれくらいか? 自分のカメラがどれくらいの機械的タイムラグがあるのか?  自分の体で覚えることが必要です。複数のカメラを持っている人の場合は、あれこれ使うのではなく、「野球の撮影の時はこれを使う」と、1台のみに限定し、そのカメラのタイムラグを徹底的に身につけるといいと思います。

 

私が昔使用していた「Nikon FM2」のカメラの場合、バッターが、これからボールを打とうと、バットを引いた瞬間(テイクバック)にシャッターを押すと、当たった瞬間が撮れる確率が高かったです。
この話をすると、「え? そんなに早い段階でシャッターを押すの?」と驚く人が多いのですが、そのくらい、早いタイミングで撮らないと、実は撮り遅れるのです。

それから、もうひとつ、役立つアドバイスをします。

・「片目でファインダーを覗きながら、もう片方の目で、周囲を見る」
スポーツ撮影ではこれが大事です。プロカメラマンは、みなこれができます。
ファインダー内でバッターを見ながらも、もうひとつの目で、投手の動きや、1塁ランナーの動き、内野手の動きも同時に見ているのです。
一塁ランナーが盗塁のスタートを切れば、バッターは打たないで見送るかもしれません。そういう、バッターだけではない全体像を把握しておくことが必要です。
(※これができないと、例えば、ファールボールがこっちに飛んできたときに、よけることもできません。けがをします)

さて、そういったことを学びながら撮影してくると。



拍手喝采! イベント撮影カメラマンの備忘録 

こんな感じの「惜しい!」という写真が撮れるようになります。

そして練習を重ねていくうちに、


拍手喝采! イベント撮影カメラマンの備忘録 

このレベルまでいけると思います。


拍手喝采! イベント撮影カメラマンの備忘録 

最終的には、これくらいの写真が撮れれば、「当たった瞬間を撮ったどー!」とヨイコの浜口君ばりに叫んでもいいと思います。

なお、余談ですが、軟式野球の場合、バットにボールが当たった瞬間に、ボールは大きく変形します。(「巨人の星」のマンガの描写みたいに) これも、写真的には非常に面白いです。軟式の少年野球の場合、バットスイングも遅いですし、わりと近い場所から撮影もできますから、「当たった瞬間」の撮影は比較的楽です。

さて、こうやって、「当たった瞬間」を撮ることができるようになると、「シャッターのタイミングの取り方」が身についていますから、たとえ、バッターが見送って、打たなくても、ボールはホームベースの真上で止まった写真が撮れます。


拍手喝采! イベント撮影カメラマンの備忘録 

これは見送っていますが、このボールをバッターが打ちに行っていれば、当たった瞬間が撮影できているはずです。(実際は、当然、空振りもあります。)

なお、同じような写真でこんなものもあります。

拍手喝采! イベント撮影カメラマンの備忘録 

コントロールミスで、なんと、バッターの背中を通るような、クソボールになってしまったのですが、これも、ベース上をボールが通る瞬間が写っています。

 

まあ、とにかく、こういう感覚は体で覚えるものなので、たくさん経験するしかないと思います。幸い、今は、デジタルで「フィルム代はゼロ」ですから、何枚でもタダで撮れます。

 

ハイアマチュアの人でも、「1試合で2~3枚撮れれば上出来」と言われるインパクト写真」。ぜひ、皆さんも挑戦してみてください。

健闘をお祈りします。

 

 

話は変わりますが、バッティングと違って、あまり話題にのぼらない、「ピッチャーがボールをリリースした瞬間」の写真も実はすごく難しくて、下の写真のような瞬間は、撮ろうとしてもなかなか撮れません。

私の感覚では「バッティングのインパクトの写真よりも難しいのではないか?」と思っています。

投手は、フォームに個性がいろいろありますし、タイミングをずらしたり、出所を見にくくしたり、様々な工夫をしますから、いっそう難しいのではないか、と考えます。

 

(現 阪神タイガース 15番 横山雄哉投手)