
今回は、写真の専門家のための記事です。いわゆる「同業者向け」というものなので、一般の方は読まなくてもけっこうです。
昔の「フィルム時代の撮影」と、今の「デジタル時代の撮影」の「差」「違い」というのはたくさんありますが、そのうちの大きなもののひとつが「後処理の有無」ではないか、と考えます。
「フィルム撮影」の時代は、私はまだ独立しておらず、いわゆる「雇われカメラマン」として、いろんな会社から仕事をもらって働いていましたが、「カメラマン」というのは「撮影するだけ」であり、撮影後に「フィルム」を発注会社に渡して、それで、「この仕事はおしまい」という感じでした。つまりは、「その日の仕事はその日に完遂する」ということです。
これに対して「日当」とか「1カットあたりいくら」という報酬をもらっていました。
厳密に言うと、前日に「機材の準備」をしますから、完全に「1日だけで終わる」というものではありませんが、とにかく、「日当」という言葉で表わされる通り、「1日の仕事」だったのです。
当時の日当は「1万円~3万円」程度でした。
渡したフィルムはその後「現像所」に送られ、ネガやポジになり、紙の写真にプリントされたりしましたが、そこには、「雇われカメラマン」は関与していませんでした。「現像代」や「プリント費用」や「事務処理コスト」は、その会社が負担していました。
それが、「フィルム時代」のいわゆる「請負撮影」の実情でしたが、デジタルカメラにより、これが大きく変わりました。
カメラマンに対して、「後処理」もさせるようになったのです。
カメラマンは撮影現場で「RAW撮影」をし、その後(その場ですぐ、ということもあるし、家や会社に戻ってからということもある) そのRAWデータをPCで現像します。この時に、ただの現像(露出調整 色補正など)だけでなく、「目つぶりした被写体の入れ替え合成」とか「写り込んだ、余計な電線の除去」といった「特殊修正処理」もやらせるケースがあるのです。「写真の選択~不要カットの除去」なんかもします。
つまり、発注会社からすると、今までは「現像所に払っていた現像料」「写真のセレクションに関わる人件費」「デザイン事務所に払っていた特殊処理費用」を支払うこと無く、カメラマン1名に全部任せてしまうのです。
であれば、当然、カメラマンは撮影以外の仕事も行うわけで、そのための時間も労力もかかるわけですから、会社としてはカメラマンに「付加料金」を支払うべきですが、「不況」を理由に、この料金を払わずに、「撮影料金」の中に無理やり組み込んでしまうことが多いのです。
「日当が3万円」というと、割のいい仕事に思えますが、「撮影枚数が多く、後処理に2日間かかった」となると、実際の「1日あたりの労賃」は1万円にしかならず、高価な機材を使って仕事をしているカメラマンにしたら「安すぎる」となります。
以前、ダンスとかスポーツ競技会の写真を撮影する会社の社長が、テレビ東京のカンブリア宮殿という番組に出て、「成功者」として取り上げられていましたが、「マラソン大会の仕事で1日で3000カット撮影」なんていう場合、その現像処理には莫大な時間がかかるわけで、そんな大変な仕事なのに、「エース級の一流カメラマンでも、報酬は3万円」では、安すぎであり、「ブラック企業」といっても過言ではないシステムだと思いました。
一方、「ビデオ撮影」というのは、昔から、「撮影のみ」と「撮影&編集」の仕事では、当然、報酬が異なっていました。ビデオの場合、編集には長時間かかり、「1日で終わる撮影のみ」の報酬と違うのは当然です。
「撮影のみ」が2万円だとしたら、「撮影&編集」の場合は、35000円とかになります。
このように、ビデオの場合は、きちんと報酬の差を設けているのに、今の「デジタル写真」の世界は、報酬の差がないのです。これはブラックだと思います。
なお、当事務所で、撮影業務を外注する場合は、カメラマンの仕事は1日で終わるように、「撮影した元データ」を全部納品してもらい、「セレクション」も「現像」も全部当方で行ないます。
現像というのは、それを操作する人の主観が大きく出来上がりを左右するので、他人にやってもらいたくなりのです。ですから、現像は自分でします。それに、もし、現像をお願いするとしたら、それなりの付加報酬も払わないといけませんが、そんなのを適正に払ったら、こっちは利益が出ません。
以上のように、現在の「デジタルカメラで写真を撮影する時代」は、カメラ機材が高額になり、機材購入に莫大なお金がかかるのに、実際の「報酬」は大きく値下がりしており、カメラマン稼業は非常に厳しくなっています。
デジタル化のひとつの弊害かもしれません。
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