ヴァリニャーノ書簡 | 安濃爾鱒のノート

安濃爾鱒のノート

これは web log ではありません。
なんというか、私の「ノート」です。

 市井の「愛国者」の個人ブログや、市井の「愛国者」に狙いを定めたまとめサイトなどでよく使い回しされ、百田尚樹著『日本国紀』でもコピペされている「日本凄い」ネタを検証する話。

 

 安土桃山時代から江戸時代初期の日本を訪れたイエズス会員、カトリック教会の司祭、Alessandro Valignano(アレッサンドロ・ヴァリニャーノ) が 書いた手紙に「日本はこんなに凄い」と書いてある、という話を調べてみる。

 

 百田尚樹著『日本国紀』によると、彼は、当時の日本人をこのように高く評している、という記述になっている:

日本人の好戦性、大軍勢、城郭、狡猾さと、ヨーロッパ各国の軍事費を比較して、日本を征服することは不可能である

 

 これは、Yahoo! 知恵袋からの無断転載(所謂「パクリ」)であることが判明している。

(詳細は 「論壇 net」 の 【日本コピペ紀】Yahoo!知恵袋から無断転載して創作した経緯が判明【ヴァリニャーノ報告】をご覧いただきたい。 )

 

 但し、そのコピペされた話自体は、どうやら史実に反するという訳ではないらしい。

 というのは、高橋裕史氏の『武器・十字架と戦国日本 イエズス会宣教師と「対日武力征服計画」の真相』(洋泉社、2012)という本に、1578年12月2日付 Valignano 書簡の詳しい紹介があり、それによると、確かに彼は、「日本は こうこうなので日本を攻め落とすのは難しい」という内容の手紙を書いて送っているようなのだ。

 

 で、Yahoo! 知恵袋に投稿した人は、それを自分なりに要約したものを書き込んだようで、百田「日本国紀」はそれをコピペしたのだ。

 私も、Valignano でググって見つかる文章を片っ端から読みまくった処、当時フィリピン制圧を成したスペイン王国が次は日本か China かと迷っている処へ Valignano が「日本は武力で制圧は無理です。ここは宗教で。私に任せて欲しい。」と進言したという話が幾つか見つかる。史実としては間違ってないのであろう。

 Valignano が「日本は武力では攻め落とせない」と云った(若しくは 書いた)のは本当であろう。

 しかし それは、スペイン王国に対し 対日武力侵攻を思い留まらせ 自分の布教活動に協力させる為の方便だったのかも知れず、従って、(百田氏らが意図しているような) この頃日本に来た外国人が 如何に日本人を高く評価していたかの証拠となるのか、疑問である。

 

日本の民度の高さを称賛する「ザビエル書簡」について

愛国無罪デマを排す、その2:「タイ首相の言葉」

愛国無罪デマを排す 「マッカーサーの言葉」

 

ーーーーー杉浦 憲二 (Sugíura Kenji) ーー sui generis ーーーーー