「ヒストリーの語源はストーリー」ではない | 安濃爾鱒のノート

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これは web log ではありません。
なんというか、私の「ノート」です。

 「ヒストリーの語源はストーリーです

百田センセー、売れ行き絶好調の御自身の著書のポップに、こんなことを書いてますが、間違えてます。


 正確に云えば(書けば)、

  《 「ヒストリー」の語源と「ストーリー」の語源が同じ 》

ということです。

 英語の "story" と "history" は、共に ラテン語 "historia" / ギリシャ語 "ἱστορία" に由来します。
 ラテン語 "historia" / ギリシャ語 "ἱστορία" が、フランス語 "histoire"、スペイン語 "historia"、イタリア語 "storia"、ポルトガル語 "história" になりました。ですから、これらの語は、全て、「歴史」と「物語」の両方の意味で使われます。


 英語の場合は、殆どそのままで語尾だけ変えた "history" と、語頭音(hi-)が消失した "story" の2語が独立した単語として存在することとなりました。というのは、"history"は、ラテン語 "historia" から直に英語に取り入れられた語であるのに対し、"story" は、

  ラテン語 "historia" → ノルマン語 "estorie"→ 英語 "story" 

となった、という経緯の違いがあるからです。 

 

 それから、もう1点、今度は、本の中から:

百田本:「ちなみにファシズムという言葉は、ムッソリーニの政党ファシスタ党から生まれたものである」

 

これも間違っています。

 「ファシズム」の語源は、「束」を意味するラテン語 "fasces" で、「ファシスタ党」から生まれたのではないのです。

 

百田氏:「本当に恥ずかしいのは … 知識をひけらかしたつもりで、バカをさらすという…」

 

 

   ーーーーー杉浦 憲二 (Sugíura Kenji) ーー sui generis ーーーーー