「アナログ」と「アナクロ」 | 安濃爾鱒のノート

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なんというか、私の「ノート」です。

 テレビのバラエティー番組の中などで、ちょくちょく使われる
   「アナログだねー
という言い回しが気になる。前後関係から推察するに、どうやら、この「アナログだねー」というのは
     《 古い 》   《 古くてカッコ悪い 》
という意味で使われているようだ。
 そのなかには、「アナクロニズム」の省略形である
   「アナクロ」
の間違いではないか?という気がするものもある。
 「アナクロニズム」 とは、英語の"anachronism(【仏】anachronisme /  【西】anacronismo / 【希】ἀνάχρόνος) から来た言葉で、元は、歴史学用語の《 過去の出来事・社会現象などに 現代の常識的見方を当て嵌めて考え評価することの誤り批判する言葉 》であるのだが、一般には、先ずは、
  《 現代の風俗・流行に、
    古い価値観・道徳観・社会規範を当て嵌めて
    論じることの誤りを指摘する言葉

として使われ、やがて、
  《 古い価値観・道徳観・社会規範をベースにした
    自分の傲慢独善にして偏狭な考えを
    現代の風俗・流行に当て嵌めて
    変なイチャモンをつけようとする

    老害に対するカウンター 
として使われるようになっていた。
 数十年前は、結構 頻繁に使われた言葉であったのだが、今では死語になったように思う。 で、最近になって使われるようになった「アナログだねー」の幾つかは、この「アナクロ」の間違いかもしれない。

  しかし、そうだとは解釈出来ないものも多いようだ。
 そういうケースでは、単に狭義に 「古い」(古くてカッコ悪い)という意味で「アナログだねー」と言っているようだ。(類語を捜せば「昭和だねー」辺りか?)
 恐らく、こういう事を言う人の認識は、
    「デジタル」=「新しい
    「アナログ」 = 「古い
ということになっているのだろう。
 確かに、オーディオ機器などの家庭用電化製品に限って言えば、中の信号処理の仕組みが digital なものは歴史が浅く 「新しい」し、analogue (analog) なものは歴史が深く「古い」のだが、本来の意味での digital なやり方というのは、ちっとも新しくはない。例えば、身長体重を測ってメモする時、普通は 数字で記録するものだ。これを身長と同じ長さの紐や体重と同じ重さの石を保管することで身長体重を記録している人などいるだろうか?前者、数字で記録するのが digital なやり方であり、後者、紐や石で記録すればそれは analogue である。人類が文字・数字というものを獲得したころ(約5千年前)から生きているような人なら 「digital は新しい」といってもいいが、そうではない人は、皆んな、生まれた時から digital なやり方を散々使ってきている。
 だから、
     "digital"  = 「新しい」
     "analogue" = 「古い」
と言う認識は、おかしい、と私は考えるので、テレビなどで「古い(古くてカッコ悪い)」という意味で「アナログだねー」と言っている人を見ると、ちょっと不愉快になる。

キープ

 

 

             杉浦 憲二 (Sugíura Kenji)