「スペイン広場」
("Piazza di Spagna")
という名前の広場がある。
「トレビの泉」と並んでローマを代表する観光スポットで、映画「ローマの休日」で、オードリー・ヘプバーンが演じる英王女が花を貰いジェラートを買うシーンで有名な場所である。
スペイン広場には、トリニタ・デイ・モンティ教会へと続く広い階段があり、ここで王女(オードリー・ヘプバーン)がジェラートを食べている。
この階段の、正式名称は
トリニタ・デイ・モンティ階段
Chiesa della Trinità dei Monti
となっているのだが、これも通称「スペイン階段」と呼ばれている。
フランスの外交官の寄付によって造られたものであるにもかかわらず、「フランス階段」と呼ぶ人は居ない。
この広場が、「スペイン広場」("Piazza di Spagna") と呼ばれ、この階段が、「スペイン階段」("Scalinata di Spagna")と呼ばれるようになった理由について、一般には、<近くにスペイン大使館があるから>ということになっているが、これは、間違いとまではいえないが、実に不十分な説明である。
昔、ここは、客を捕まえようという娼婦たちが一杯屯していた。
イタリア政府の役人は、それが体面上宜しくないカッコ悪いみっともないという理由で、彼女たちを一掃すべく、或る日、一斉検挙することを計画した。
イタリアと友好国であるスペインの大使館には、前以てその予定が伝えられていた。
大量の娼婦の一斉検挙となれば現場は大騒ぎとなる。近くにあるスペイン大使館の人たちも騒ぎに幾分巻き込まれてしまう恐れがある、だから、事前に連絡しておいたのである。
(一説によると、娼婦たちを広場から一掃すれば、近くのスペイン大使館からも喜ばれる筈、イタリアの友好国の大使館に喜ばれることをするのは、警察官僚にとって大きな特典稼ぎになる筈、という計算から、自分の業績を強くアピールするためにスペイン大使館に必要以上の連絡をした、とも言われている。)
ところが、当日、スペイン大使館は、娼婦たちを大量に匿った。
イタリアの警官達は、驚き慌てスペイン大使館に抗議し、娼婦たちの引き渡しを求めたが、スペイン大使館側は、大使館の持つ特権を行使して、匿った女たちを引き渡さない。
イタリアの当局は、国際問題に発展するのを恐れて、引き下がるしかなかった。
この時のスペイン大使館の行為を称えて、やがて、この広場は、「スペイン広場」("Piazza di Spagna") と呼ばれ、この階段は、「スペイン階段」("Scalinata di Spagna")と呼ばれるようになったのであるが、こんな事の詳細を伝えるのはちょっと憚られるので、「大人の配慮」がなされた結果、「近くに…」なんていう抑制した説明になったのである。
映画「ローマの休日」で、オードリー・ヘプバーン演じる英王女は、英国大使館より脱出逃亡し、米国人新聞記者の部屋に泊まり、翌朝部屋を出るとき、そいつからお金を借りるのだが、それを見ていた同じアパートのおばさんは、王女のことを、娼婦だと勘違いする、というシーンがあるのだが、これって、もしかして……。
このスペイン広場・スペイン階段についてネットでググルと、観光客のための情報がいっぱい拾える。
綺麗な写真も動画も一杯、 <保護のため広場での飲食は法律で禁じられており、ローマの休日のシーンのようにジェラートを食べる事はできない>なんて事まで日本に居て判るのだが、命名の本当の理由については、なんか見つからないようだ。
伊西両国政府をはじめお堅いところ、真面目でなけりゃ叩かれる恐れがあるところは、こういう話を伝えない。一般人のウェブサイト・ブログの類でも、自分の名前を出しているところでは使いたくない言葉というものがあるのだろう。結果、この話は、ネットで拾えない。
じゃぁ、ってんで、私が書いてネットに上げておきたい。
# ところで、「ローマの休日」の女優
# オードリー・ヘプバーン(Audrey Hepburn)
# も、
#「ヘボン式ローマ字」の
# ジェームス・カーティス・ヘボン氏(James Curtis Hepburn)
# も、同じ "Hepburn" さん。