鰐梨:牛の睾丸に似た México 原産の果物の呼び名 | 安濃爾鱒のノート

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なんというか、私の「ノート」です。



安濃爾鱒のブログ-avocado
こいつのことを何と呼ぶか?
 
「アボド」というと、馬鹿にされ、「正しくは『アボド』だ」と"教え"られる、
ということが、今日の日本では定着してしまっている。
確かに、ネットで調べてても、例えば、Wikipedia などでは、
 
   日本では「アボド」と誤植されたり誤って、
   あるいは訛って呼ぶ人が多いが、
   「アボド」が日本国内での正しい名称である。
 
と断言している。
で、
  《 その「アボド」が正しい 》
と言い張るその根拠が、
  "avocado" だから
というんであるが、
それなら、「アボド」でもなくて
  「アヴォカド」
なんじゃないの?と、私は、「突っ込み」をいれたい。
 
で、更にいえは、"avocado" って、英語でしょ?
あれを英語で "avocado" というから、「アボド」が正しい、って、理由になってるか?
アレは、米国人英国人が作ったものでも、米国・英国が原産でもないのだが。
 
あれは、México の原産である。
 
México 原産の果物について、
  米国人が "avocado" と呼んでいるから、
  日本でも 「アボカド」と呼ぶのが正しい
って、それって、理由になっているといえるのか?
 
例えば、前ローマ教皇、
ポーランド共和国(Rzeczpospolita Polska) の 中南部 ヴァドヴィツェ(Wadowice)出身の


第264代ローマ教皇
  羅:Ioannes Paulus II安濃爾鱒のブログ-Ioannes Paulus II

  英:John Paul II、
  伊:Giovanni Paolo II、
  波:Jan Paweł II
  本名は ポーランド語で
     カロル・ユゼフ・ヴォイティワ
     ( Karol Józef Wojtyła )
を、日本では、
   ヨハネ・パウロⅡ世
と呼んでいるが、彼のことを、米国人は
  ジョン・ポール・セカンド
   ( John Paul II )
と呼んでいる。


さきほどの果実について、
   米国人が "avocado" と呼んでいるのだから、
   「アボカド」が日本国内での正しい名称である。
と主張するのは、
前ローマ教皇(:日本人は普通『ヨハネ・パウロⅡ世』と呼んでいる)のことを
   米国人は、"John Paul II" と呼んでいるから
   日本でも、「ジョン・ポール・セカンド」と呼ぶのが正しい
と、言っているのと同じくらい、奇怪な主張である、と 私は思う。
 
 「 ヨハネ」や「パウロ」というのは、由緒正しい、ラテン語由来単語の「日本語読み」である。ラテン語の復古音を、日本語の外来語として、聞き取りやすく変形したものである。ラテン語は、日常生活の言葉としては既に消滅しているが、だからといって、文字だけが残っているのではなく、その音を復活させたもの:復古音が確立している。そして、ラテン語は、日本には、学術語、語源説明、単語要素・造語要素、そして、なんか、アカデミックっぽくて厳かそうでかっこよさげな言葉、そして、欧州各国語の中でのニュートラルなものとして、色んな分野で色んな形で日本語に外来語として浸透しており、著名な名詞等には、復古音をベースとした一定の安定した日本語読みがある。ラテン語復古音のうち、まず、1. 日本人にとって発音上問題ないものは、そのまま音写してカタカナ化 2. 語尾の "-us" は、日本人には発音し辛いので、これの古い姿である "-os" に置き換えてから音写してカタカナ化 (ラテン語から直接日本語化したのではなく、英語経由だと 「アス」) 3. 日本語のパターンに無い子音の連続はざっくりと簡略化。

 日本人が、第264代ローマ教皇(羅:Ioannes Paulus II、本名:Karol Józef Wojtyła)のことを、「ヨハネパウロⅡ世」と呼ぶのは、このルールに従ったものであって、歴史的伝統的にも理論的にも儀礼上もまったく正しい。けちのつけようがない。
 もしこれを、
   米国人は、"John Paul II" と呼んでいるから
   日本でも、「ジョン・ポール・セカンド」と呼ぶのが正しい
 などと主張する奴が居たら、そいつは超スーパーウルトラ大馬鹿野郎である。


で、 話を戻して。



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のことであるが、
これは、メキシコ(México) の原産である。
で、その原産地 メキシコ(México) では
     アグアカテ aguacate (m.)
と呼ばれている。
ペルー(Perú)では
    パルタ palta (f.)) パルトpalto (m.)
と呼んでいた。(インカ帝国の公用語:ケチュア語で、パルタと呼んでいたそうな。)
 こいつに醤油をかけて食うことで刺身のトロの代用とするというのは、
 最近日本でも知られてきたが、中南米に住む日本人はずっと前からしてきた。
 
これについて、Wikipedia などでは、
   語源はナワトル語で睾丸を意味する単語
    「アワカトル」(auacatl)
   で、アボカドの実の形状に由来している。

と説明している。
ところが、私が知っている、オンラインのナワトル語(náhuatl)-スペイン語(español)辞典:

Diccionario náhuatl - español en línea en AULEX

で、調べてみると、
  "auacatl"
という語はなく、
  "auakatli", "auakatl"
ならあり、で、まず、
 "auakatli"
を この辞書で引くと
auakatli : aguacate (m.), palta (f.)
と出てくる。
《 米国人が avocado と呼んでいる果物 》を指す言葉として、
私がスペイン語圏(:ラテンアメリカ)に住んでいる間に聞いた二つのスペイン語の単語である。
また、もう一方の
  auakatl
を引くと
  auakatl : testículo (m.)
とある。
testículo とは、スペイン語で「睾丸」のことだ。
つまり、私が調べた限りでは、(少なくとも今の)ナワトル語では、
   《米国人が avocado と呼んでいる果物》 は、auakatli
一方、
   『睾丸』は、 auakatl
違っている
Wikipedia 等が書いているような、
  《 米国人が avocado と呼んでいる果物 》も『睾丸』も、
   同じ "auacatl"
というわけではないようである。
つまり、
  そんな程度のもん(:Wikipedia などの ろくに調べもせずに書かれたもの)が、
     日本では「アボド」と誤植されたり
     誤って 或いは 訛って呼ぶ人が多いが、
     「アボド」が日本国内での正しい名称である。
  といっているのを真に受けて、「アボド」が正しいと言い張り、
  「アボガド」という人が居るとそれを馬鹿にする。
とか、
   "avocado" という英単語を引き合いにだしておきながら、
      「アボド」 でも
      「アヴォカド」 でもなく、
      「アボカド」 だ
   と主張する。
とか、
   米国原産ではなく、México 原産のものに対し、
      米国人が "avocado" と呼んでいるのだから、
     「アボカド」が日本国内での正しい名称である。
   と主張する。(México 人が何と呼んでいるかは無視)
とか、
   もともと、
     "auakatli" → "aguacate" → "avocado"
      → 「アボカド」 → 「アボド」
   と変遷して来た語について、
   その途中の段階の或るひとつだけを指して、
   それが正解だと主張し、
   それと違うことを言う人を、間違っている、馬鹿だ、という。
とか……
 
馬鹿は一体どっちだ?