#がん治療研究 eNK細胞が肺がんを含む難治性固形がんに対する画期的な細胞療法となる可能性/ヘリオス
●eNK細胞→iPS細胞から作った”がん攻撃強化細胞”、国がんとの共同研究か
●ヒト肺がんモデルのマウスでほぼ完全な腫瘍退縮確認、患者肺がん組織を移植したマウスでeNK単独で腫瘍の増殖28%抑制、セツキシマブ併用で53%抑制
●進行肺がんや将来的には他の固形がんにも広がるか

https://www.nikkei.com/nkd/disclosure/tdnr/20260402597457/

【記事の概要(所要1分)】
肺がんで、既存治療だけでは届きにくい固形がんに対し、新しい細胞療法の可能性が見えてきた。
iPS細胞から作った「eNK細胞」が、肺がんを狙って集まり、長く働き、抗体薬とも組み合わせやすいように強化されている点が特徴になる。 

論文では、肺がんに対して化学療法、放射線療法、免疫チェックポイント阻害薬などが開発されてきた一方、CAR-Tを含む細胞療法は固形がん、特に進行がんでは効果に限界があると整理。
そのうえで、CCL19、CCR2B、高親和性CD16、IL-15、NKG2D-DAP10を持たせたeNK細胞を作製し、がんの中に入りやすさ、持続性、殺傷力、抗体依存性の攻撃力を高める狙いを示している。培養実験では、ヒト肺がん細胞に対して強い細胞傷害活性とADCCが確認された。 

マウスでの検証では、人の肺がん細胞を移植したモデルでほぼ完全な腫瘍退縮を達成。
患者の肺がん組織を移植したモデルでも、eNK単独で腫瘍増殖を28%抑え、セツキシマブ併用では53%抑制した。
治療後の腫瘍内ではヒトCD45陽性細胞も見つかっており、投与した細胞が実際に腫瘍内へ入っていたことも裏づけられた。
難治性の固形がんに対する、あらかじめ準備して使う同種細胞療法の候補として期待が持てる一方、現時点では前臨床段階で、人での有効性や安全性はこれから確認される段階になる。 

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この研究を前向きに見てよい理由の一つは、ヘリオス単独の社内発表で終わっておらず、著者所属に国立がん研究センターが入っていることです。
企業の開発ストーリーだけではなく、国内のがん研究の中核機関が論文の形で関わっているので、少なくとも見せかけの話ではなく、研究として外に出せる水準まで整理されていると認識しました。 

もう一つは、固形がんの細胞療法でいつも問題になりやすい、がんの中に入りにくい、入っても働き続けにくい、効き方が弱くなりやすいという点に、最初から手を打とうとしていることです。
しかも培養実験だけでなく、マウスでの腫瘍縮小や、抗体薬との併用で上乗せが見えているので、発想だけで終わっていないところが前向きです。
国立がん研究センターが関わっていることを踏まえると、基礎の面と実際の治療応用の面の両方を意識した研究として見やすくなります。 

ただ、人での有効性や安全性がもう確かになったわけではありません。
今あるのは前臨床の結果で、人の肺がんで同じように効くか、どの患者さんに合うか、副作用がどうかはこれからです。 
次に見るべきは、人での試験に進めるか、既存の抗体薬などとどう組み合わせて治療効果を広げられるかです。