#がん治療研究
腫瘍を光らせる「mRNAがん治療薬」で革新へ、米Strand Therapeuticsが225億円調達/Forbes
・免疫が反応しなかった末期がん患者に腫瘍縮小効果
・22人に投与複数例でステ4の腫瘍著しく縮小、メラノーマで全身の腫瘍消失例
・2030年商業化目指す


米バイオベンチャーのStrand Therapeuticsは、がん細胞を「光らせて」免疫系に見つけさせる革新的なmRNA治療薬の臨床試験に成功。患者の腫瘍内でインターロイキン12(IL-12)を局所的に発現させ、免疫細胞の攻撃を促進する「遺伝子回路」を導入したmRNAを投与することで、免疫が反応しなかった末期がん患者にも腫瘍縮小効果が見られました。

第1相試験では22人のがん患者に投与し、複数例でステージ4の腫瘍が著しく縮小。特にメラノーマの1例では、治療後のスキャンで全身の腫瘍が消失するという「衝撃的な改善」が画像で確認されました。

この成果により、Strandは約225億円を新たに調達。安全性と有効性が示された同技術は、将来の標的型がん治療や個別化医療の基盤になると期待され、2030年の商業化を目指しています。

この治療法は、従来の毒性の高いIL-12投与の限界を克服し、腫瘍にだけ効果を集中させるという点で画期的。mRNA医薬の新たな可能性を切り拓く事例とされています。

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こちらの記事で紹介された、新しいmRNAを用いたがん治療薬は「STX‑001」と言い、その第Ⅰ相臨床試験がネタ元になります。

治験の概要は、アメリカ臨床腫瘍学会(ASCO)のポスターセッションで発表されており、
「STX‑001, an LNP‑encapsulated self‑replicating mRNA expressing IL‑12, in patients with advanced solid tumors」というタイトルでまとめられていました。

残念ながら現時点では、査読付き学術誌に掲載された論文は確認できていませんでしたが、今後、正式な学術誌への掲載が期待されます。

ポスターセッションでの要旨は以下の通りです。

ポスター要旨(2025 ASCO 年次大会、要旨番号 9556)
Phase I dose escalation trial of STX‑001, an LNP‑encapsulated self‑replicating mRNA expressing IL‑12, in patients with advanced solid tumors.

この第Ⅰ相臨床試験は、LNP(脂質ナノ粒子)に封入された自己複製型mRNA(STX‑001)を、免疫チェックポイント阻害薬に抵抗性のある進行固形腫瘍患者に対して腫瘍内投与することで、安全性、有効性、薬物動態および薬力学的効果を評価しています。STX‑001は、腫瘍微小環境でIL‑12を局所発現させ、免疫応答を活性化することを狙った新規治療法です。

安全性:300µgまでの用量で忍容性良好。治療関連の有害事象は、免疫活性化を反映したもので管理可能(例えば、軽度~中等度のリンパ球減少や転帰良好な肝酵素上昇など)。

免疫応答・薬力学:血中IL‑12およびIFN‑γの濃度が用量依存的に上昇。腫瘍組織には、PD‑L1の発現およびCD4⁺/CD8⁺T細胞の浸潤が強く誘導されたことを確認。

抗腫瘍効果:進行がん患者22人中、完全奏効(CR)1例、部分奏効(PR)複数例、さらには薬剤未投与部位の腫瘍縮小(アブスコーパル効果)も報告。これらは、局所腫瘍に対する注射のみで全身の免疫効果が誘導された可能性を示唆。

まとめ:
STX‑001は、腫瘍局所へ自己複製型mRNAを導入することで、免疫が反応しなかった進行がんに対しても免疫を活性化し、腫瘍縮小を促せる画期的なアプローチとして注目される。安全性も良好で免疫誘導効果も確認できたため、単剤あるいは免疫チェックポイント阻害薬との併用でのさらなる開発期待。