#がん治療
照射部位の6割で効果 頭頸部がんの光免疫療法 離れた患部の治療課題/47NEWS
・全国24施設で行われた77例の検証、対象は「手術も放射線ももうできないとされた患者さん」
・免疫療法との併用によるさらなる進展が期待され臨床試験が進行中
https://www.47news.jp/12652171.html
がん細胞だけを狙って破壊する新しい治療「光免疫療法」が、頭頸部がんの治療において明るい成果を見せ始めています。全国24施設で行われた77例の検証では、光を当てた部位のがんが約6割のケースで縮小または消滅し、特に「手術も放射線ももうできない」とされた患者において、高い効果が確認されました。
この治療は、抗体と光反応物質を組み合わせた薬を体内に投与し、がん部分に光を当ててがん細胞のみを破壊するというもの。副作用として一部に痛みやむくみが見られましたが、ほとんどは管理可能であり、安全性も一定の評価を受けています。
現時点では光を当てた部位に限った効果が主で、全身の免疫活性化までは確認されていませんが、免疫療法との併用によるさらなる進展が期待され、臨床試験が進行中です。
現在、光免疫療法が保険適用されているのは頭頸部がんに限られていますが、すでに他のがん種に広げることを目指した臨床試験が進められています。たとえば、胃や食道、肺、膵臓など、体の奥にあるがんでも、内視鏡などの技術を使って光を当てられるようにする工夫がされています。こうした工夫によって、将来的に保険適用の拡大も期待されているところです。
とくに注目されているのが先述の「免疫チェックポイント阻害薬」との組み合わせです。光免疫療法では、がん細胞が破壊されたときに、がんの成分(抗原)が体内に放出され、それを免疫細胞が「敵」と認識することで、体全体の免疫が活性化する可能性があると言われてきました。実際、動物実験では、光を当てていない他の部位のがんも小さくなった例があり(これを“アブスコパル効果”と呼びます)、これを人でも再現しようとする臨床試験が海外で進行中です。
もしこれがうまくいけば、光を当てた場所だけでなく、体のあちこちにあるがんを同時に弱らせるような治療も夢ではありません。がんが広がってしまって手のつけようがない、と言われた方にとっても、新しい希望になる可能性があります。
ただ、現時点ではまだ課題もあります。光免疫療法には専用の照射機器が必要で、その導入コストが高かったり、使える施設が限られていたりするため、全国的にはあまり普及していません。また、光の届く場所に限られることもあり、技術的な面でのハードルもあります。
それでも、今回の検証では安全性の面でも比較的良好な結果が出ており、副作用があっても多くは管理できる範囲でした。照射を受けたがんの約6割で効果が見られたという報告は、特に他の治療法が使えないようなケースでも「やってみる価値がある」と感じさせてくれます。
光免疫療法は、まだ発展途中の新しいがん治療ですが、標準治療が効かなくなった患者さんにも可能性を届けてくれる「もう一つの選択肢」として注目されています。すぐに全ての人に効果があるわけではないにしても、日々の研究や臨床の積み重ねによって、少しずつ現実味を帯びた治療法になってきています。今後の進展に、大きな期待がかかっています。