#大腸がん
大腸腫瘍進展の新たな分子機序の解明 Regnase-1はNFKBIZ mRNAの分解を介してIL-17 signalingを制御し、大腸腫瘍の発育を抑制する/京都大学
●Regnase-1の動きを安定させる薬の使用でがん縮小
●ヒト大腸がん組織でもRegnase-1が少ない人ほど予後が悪い傾向を確認

https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research-news/2025-06-06

実際の論文の日本訳も読んでみました。
患者さんの数が多い大腸がんのことですから、特に重要な知見であるように思います。

以下が概要です。

この研究からわかったことは、、、、

Regnase-1(レグネースワン)というたんぱく質が、大腸がんの進行を抑える働きをしていることです。
Regnase-1が、がんを進める遺伝子のメッセージであるNFKBIZを破壊→分断して、IL-17という炎症を起こさせるスイッチが強くなりすぎないように調節しているのです。IL-17は、強く働きすぎると→暴走するとがん細胞が増殖してしまう、というものです。

大腸がんになりやすいマウスを使った試験の結果、Regnase-1がないマウスが大腸がんの進行が加速的でした。
逆に、Regnase-1があるマウスはがんの増殖が抑えられました。

このRegnase-1をターゲットとした治療薬の候補として、既存薬「DMF(ジメチルフマレート)」が、Regnase-1の働きを安定させることがわかりました。

実験でも、DMF使用で大腸がん縮小が確認されました。
この薬は、多発性硬化症や乾癬の薬として治療に使用されているものです。

またさらに、人間のがん、つまり大腸がん患者さんのがん組織を調べてみると、Regnase-1が少ない人ほどがんが進んでいて予後が悪い傾向があることがわかりました。
米国のデータベースでも確認されました。

以上です。

がんの進行を食い止める手立てとして、有望なターゲットの発見だと思います。

また既にある薬が使えるなら素晴らしいことです。
既存薬には安全性データも揃っており、適用しやすいからです。
※場合によっては、同じ構造で進行する他の部位のがんでも使える可能性がありますよね

この研究、進展に期待します。