#膵臓がん
mRNAワクチン、膵臓がん治験で有望な結果を示す/Forbes
●小規模試験、第1相試験
「参加者血中で治療後最長4年経過も免疫細胞が確認されmRNAワクチンの寿命は短いのにワクチンによって誘導された抗腫瘍免疫細胞が長期にわたって維持される可能性を示している」 他
mRNA個別ワクチンの小規模試験結果からのレポートです。
原典となる論文はこちらです(nature)↓
効果を”垣間見た”というのが現状だと言ってよいと思いますが、まず、安全性について確認されていることと、大量に作ることが可能ということが、背景的に重要であると思いました。
また、展望として、膵がんだけではなく、他のがんへの適用も十分に考えられるということで、期待が膨らみます。以下、概要と展望についての日本語訳になります。
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<概要>
がん免疫療法の効果を高めるには、患者ごとに異なるがん細胞の遺伝子変異に合わせた治療が必要です。
「オートジーン・セブメラン」 は、個別のがん患者の腫瘍組織から得られた遺伝子変異データをもとに設計される、特別なメッセンジャーRNA(mRNA)を使ったがん免疫療法です。この治療では、最大20種類の「ネオアンチゲン(がん特有の異物)」に対する免疫反応を引き起こすことを目指します。
現在進行中の第1相試験では、次の2つの方法でオートジーン・セブメランを評価しました。
単独治療(30人の患者)
免疫チェックポイント阻害薬「アテゾリズマブ」との併用(183人の患者)
この試験の主な目的は、安全性と治療に対する体の耐性を確認することでした。さらに、薬の体内での動き(薬物動態)、免疫系への影響(薬力学)、初期の抗がん効果、免疫応答についても調べました。
臨床試験の途中経過では、以下のような結果が得られました。
安全性に問題はなく、患者の71%でネオアンチゲンに対するT細胞反応が確認された。
この免疫反応は、治療開始前には検出されなかったものがほとんどであった。
反応は最長23か月後まで確認された。
CD8+ T細胞(がん細胞を攻撃する免疫細胞)のうち、ネオアンチゲンに特異的なものが中央値で7.3%、最大で23%を占めた。
腫瘍組織内にもこのT細胞が浸潤し、一部の患者では腫瘍にいるT細胞全体の7.2%を占めていた。
また、治療効果についても以下のような結果が報告されました。
単独治療を受けた患者の中で、1人に明確な抗がん効果が見られた。
アテゾリズマブと併用した患者のうち、通常は免疫療法が効きにくいとされる2人に効果が確認された。
これらの結果から、オートジーン・セブメランは、より早い段階の治療法として今後も開発を進める価値があると考えられています。
<試験結果の意義>
本研究では、個別化mRNAネオアンチゲンがん治療の臨床データを示し、大規模な製造が可能であることを確認しました。
1. 安全性と免疫反応の評価
オートジーン・セブメラン単独療法およびアテゾリズマブ併用療法の副作用
主に管理可能で回復可能な全身反応が確認されました。
これらの反応は、RNAワクチンが免疫系を刺激する特性によるものと考えられています。
重篤な副作用はなく、事前に予想されていた範囲内でした。
T細胞免疫応答の誘導
多くの患者で、新たにCD4+およびCD8+ T細胞によるネオアンチゲン特異的な免疫応答が観察されました。
最も長期にフォローアップされた患者では、最後の治療から65週間後でもT細胞応答が検出されました。
2. ネオアンチゲンのターゲティングとT細胞応答の特徴
患者の80%以上で20種類のネオアンチゲンが特定され、98.5%の患者で最低5種類のネオアンチゲンが同定されました。
これにより、従来は変異量が少なく免疫療法が効きにくいとされるがんに対しても、iNeST(個別化ネオアンチゲン特異的免疫療法)のアプローチが有効である可能性が示されました。
免疫応答の強さは患者ごとに異なり、一部の患者では、CD8+ T細胞の5%以上が特定のネオアンチゲンを標的とするT細胞で占められていました。
3. 免疫療法としての有望性
一部の患者では明確な抗腫瘍効果が観察されました。
例えば、オートジーン・セブメラン単独療法を受けたMSI-High型胃がんの患者1人が完全寛解しました。
併用療法では、直腸がんの患者1人に完全寛解が見られました。
治療の早期適用の可能性
進行がんよりも腫瘍負荷が少ない早期がんに適用することで、より強い免疫反応が期待できると考えられます。
実際に、初期の試験では、早期のトリプルネガティブ乳がん(TNBC)患者で強力かつ長期持続するT細胞応答が確認されました。
また、切除後の膵がん(PDAC)患者に対する試験でも、ネオアンチゲン特異的免疫応答と無再発生存期間の延長の関連が示されました。
4. 今後の展開
現在、以下のランダム化第2相試験が進行中です。
進行メラノーマ患者を対象としたオートジーン・セブメラン+免疫チェックポイント阻害剤(CPI)の試験(NCT03815058)
切除後の膵がん患者における標準化学療法+オートジーン・セブメラン・アテゾリズマブの比較試験(NCT05968326)
大腸がん(CRC)のctDNA陽性患者に対する補助療法としての評価(NCT04486378)
<結論>
本研究により、オートジーン・セブメランは高い免疫原性を持ち、個別化がん免疫療法の一環として実用化できる可能性が示されました。
他のワクチンプラットフォームと比較しても優れたT細胞応答を誘導することが確認されました。
早期がんや腫瘍負荷の少ない状況での適用が特に有望であり、今後の研究によってさらに有効性が明らかになると期待されます。
これらのデータをもとに、ネオアンチゲン予測アルゴリズムの改良や、最適な治療法の組み合わせの研究が進められます。
今後の研究が、がん免疫療法の新たな選択肢としてオートジーン・セブメランの位置づけを強固にすることが期待されます。
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