#がん治療
がん増殖抑制へ新薬剤 福島医大と金沢大が開発/福島民友新聞
●放射性核種「アスタチン」に「アルブミン」を加えた薬剤
●血液中にアスタチンが長く留まりがんにも多く集積→増殖を抑制(マウス)
放射線内用療法、つまり、薬剤によって体内に放射線を発する核種を入れこみ、体の内側から被爆させることでがんをやっつけようという放射線治療に関する話題です。
つい先日、国がんさんが主体となる同じ療法の研究成果が発表されたので取り上げたところです。
あちらの試験は111In=塩化インジウムという、既に診断用放射線医薬品として使用されているものを使ったものでした。これに薬物送達システム=DDSとなるリポソームをかけあわせたもので、核医学のDDSの融合という点で画期的な研究なのですが、こちらも似ています。
今日紹介する記事の研究で用いられているのは、211At=アスタチンです。
アスタチンが放射するアルファ線は、放射距離は短いもののDNAを切断する能力が高いということで期待度が高く(半減期は8時間)、国内の複数機関で研究が進められている核種です。
これまで内用放射線療法については、アスタチンのような研究用の核種を輸入に頼っていたため、放射性物質特有の扱いの難しさとか難しいイメージによって、国内での研究があまり進みませんでした。
そこで登場したのがこのアスタチンということになりますが、既に国内での生産が可能となっています。
そして、その生産に必要な「中型サイクロトロン」という機械が福島県医大にあることから、こちらの研究が進んだものと言えます。
さてそのアスタチンにアルブミンを結合させたものが今回の研究で開発されているのですが、こちらもやはりDDSによる薬剤の発展と言える成果で、がん病巣にしっかりアスタチンが集積していることが確認できているようです。
アスタチンの実用に向けた研究は続いているところですが、生産についての研究も進んでいます。理論上は、大量のアスタチンを作ることが出来る技術もしており、これからの発展が楽しみです。