#がん悪液質
がん悪液質による筋萎縮を抑制する新たな分子機構を発見 名市大/マイナビ
骨格筋産生の「p62」タンパク質が抗酸化物質の発現を促進しがん悪液質による筋萎縮を軽減
●マウス試験、p62発現を調節(増強)でがん悪液質を軽減し筋肉を維持できる可能性が示唆

https://news.mynavi.jp/techplus/article/20230911-2769043/

 

がん悪液質は、がん細胞を要因として筋肉を減らし体重を減らし、患者さんのQOLを悪化させて予後不良を起こす因子として、対策が急がれている症状です。

 

がんで痩せる、というのは、この悪液質が原因であることが多く、痩せないこと、ががん患者さんにとって、重要な課題となっています。

昨年、アナモレリンという画期的な薬が登場し、がん悪液質に対して一定の効果を成しているようです。

 

こちらの研究を極簡潔に言うと、筋肉が生み出すp62というたんぱく質を増強することでがん悪液質を抑えて筋肉を維持出来る可能性、についてのものです。

がんサバイバーさんにとって、無茶苦茶大事な研究ではないでしょうか。

 

さて、こちらのp62タンパク質を主題とした名古屋市立大学さんの研究は、どうやら元々は、加齢性の筋萎縮=年を取るとどのようにして筋力が衰えてしまうのか、という研究から来ているようです。経緯とも言えますが。
 
運動が加齢性筋萎縮を予防する新規分子基盤の解明↓

https://www.ms-ins.com/welfare/document/list/pdf/2020/2019_2_01.pdf

 

以下、あくまで私の私見に過ぎません。

 

こちらの論文で注目したのは、マウスの定期的運動によってp62がどう発現するのか、です。

 

マウスが”自発走行運動”することによって、、、とありますので、おそらくあのクルクルまわる輪状器具の中で運動させたのだろうと思いますが、これによって、

 

●ヒラメ筋の p62 の発現を増加した

●白色広筋の p62は増加しなかった

 

とあります。

 

ヒラメ筋というのは、人で言うところのフクラハギであり、主に赤筋(遅筋、有酸素運動で働くような筋肉)、白色広筋とはその名の通り白筋(速筋、無酸素運動で働くような筋肉)で、この結果からは、赤筋を定期的に動かすことによってp62発現が増加した、と言えそうです。

 

マウスでのこの試験を参考にするなら、息を止めて重たいウェイトを挙上するような運動よりも、呼吸を保ちながら反復運動するようなわりと軽めの運動を続けることの方が、p62発現については、有利と言えそうです。

 

繰り返しますが、これはこちらの論文からの私の私見的な解釈です。

 

もし私ががん悪液質を予防したり、対策するために運動をするなら、これらの試験からは、30分程度の歩行を欠かさないようにする、と思います。

フクラハギの筋肉は、意識せずとも歩けば働くような筋肉ですから、ただ歩くだけです。

 

一方、昨今言われますように、一日数分程度の高強度の運動も予後延伸に関わる可能性が高いので、やはり実施すると思います。階段を上る、スクワットなどですね。

 

持論が長くなってしまいましたが、こちらのがん悪液質の論文の結語で言及されているのは、「骨格筋生物学を基盤とした基礎研究の成果を医学や健康科学に応用する可能性が期待」です。

 

つまり、筋肉に関する生物学的な研究ががん悪液質に役立つかも知れない、ということであり、医療での実践としては薬の開発もあるでしょうが、効率的な運動もきっとあるはずです。

 

がん悪液質は治療初期から気をつけていくべき事項とされていますから、緩和ケアや支持療法の分野でも生かされるように願うばかりです。